
日本の農業は今、かつてない大きな転換点にあります。農林水産省が2026年3月に公表した「令和7年農林業センサス(概数値)」によると、基幹的農業従事者数(※1)は平均年齢67.7歳であり、この5年間で働き手が24.0%(32 万7000人)も減少したという実態が明らかとなりました。

また、農林水産省が発表した「地域計画」の策定状況(2025年4月末時点)によると、10年後の農地の受け手が決まっていない面積が全体の31.7%にのぼることが判明しました。農地の荒廃を防ぎ、国内農業の基盤を維持するためには、農業の担い手を確保していくことが必要です。
今、その解決策として注目されているのが、スポットワークを単なる一時的な助っ人ではなく、「将来の担い手に出会うための採用戦略」として活用する新しい形です。タイミーが実施したアンケート調査では、利用農家の約3割が実際にスポットワークで働きにきていた方の長期採用を実現しており、中には「20代の正社員」も誕生していることが分かりました。
本レポートでは、スポットワーク研究所の最新の市場レポートや成功事例から、スポットワークが切り拓く「新規就農の未来」を紐解きます。
(※1)基幹的農業従事者とは、15 歳以上の世帯員のうち、ふだん仕事として 主に⾃営農業に従事している者を指す(農林水産省「用語の解説」より)
市場レポートで見る、農業でのスポットワークの爆発的普及
スポットワーク市場レポートによると、農業の職業に分類される求人は募集件数・平均時給ともに右肩上がりで推移しています。特に繁忙期(2025年8-10月)には募集件数が前年の約3倍に達しました。
【農業の職業実数】
| 期間 | 募集件数(前年同期比) | 平均時給(前年同期比) | 平均労働時間 |
| 2025年8月-10月 | 12,838件 (198.6%) | 1,078円 (+3.5%) | 5.2時間 |
| 2025年11月-2026年1月 | 8,695件 (163.6%) | 1,126円 (+7.4%) | 5.0時間 |
(スポットワーク市場クォータリーレポートより)
特筆すべきは、直近(2025年11月-2026年1月)の平均時給が前年比7.4%増の1,126円に達している点です。人手不足が深刻化する中、適切な対価を支払うことで労働力を確保しようとする農家の姿勢が鮮明になっています。
「スキマバイト」が「長期採用」の入り口に
募集件数の急増というマクロな動きの裏側で、スポットワークを「一時的な人手不足解消」ではなく、「将来の担い手に出会うため」に活用し、成功している農家が誕生しています。株式会社タイミーが実施したアンケート調査によると、農業分野における膨大なマッチングの中から、着実に「長期採用」が生まれていることが分かりました。
【調査概要】
調査名 :タイミーを通じた長期就業に関するアンケート
調査期間:2026年1月9日〜3月30日
調査対象:「タイミー」を導入する農業の事業所担当者 301名
エリア :47都道府県
調査方法:インターネット、電話
長期採用への高い転換実績

- タイミーを利用する農家の約3割(28.9%)が、実際にスポットワーカーを長期採用につなげています。
- 「長期採用を検討した(または実際に採用した)」層に限定すると、その半数を超える56.1%がマッチングに成功しています。
(※全体301件のうち「検討していない」146件を除いた155件から算出)
従来の「求人広告を出しても応募が来ない」「面接してもすぐに辞めてしまう」という課題に対し、まずは現場を体験してもらうスポットワークが、極めて確度の高い採用ルートになっていることがうかがえます。また、長期採用を検討した「2件に1件以上が成功している」という実績は極めて高い水準であり、タイミーが「長期採用プラットフォーム」として機能していることを裏付けています。
長期採用のうち約13%が「正社員」。キャリア形成の新たな形
長期採用に至った際の雇用形態の内訳を見ると、スポットワークが単なる補助作業員の確保を超え、次世代の担い手確保に寄与している実態が見えてきました。特筆すべきは、長期採用につながったケースのうち12.6%が正社員として迎え入れている点です。スポットワークが正規雇用の有力な入り口となっていることがわかりました。

高齢化が進み、基幹的農業従事者が激減する中で、スポットワークを通じて共に農業を担っていけると思える人材に出会えていることは、持続可能な日本の農業につながる大きな希望といえます。
スポットワークによる採用活動が成功するカギは、「現場での実感」
長期採用を決めた事業者に対し、「なぜ採用に至ったか」を聞いたところ、採用面接や履歴書だけでは決して見えない要素が上位を占めました。

「現場の1日」が最高の面接に。ミスマッチを解消し長期採用を実現した成功事例
長期採用を決めた理由としては、「仕事ぶり・スキル(63.2%)」や「人柄・現場適性(62.1%)」が多いのが特徴です。そこで、履歴書だけでは分からない「現場での働き」が、採用の決め手となった事例をご紹介します。
① 未経験の若手が「期待の新人」へ(大分県・野菜農家)
高校卒業後、フリーターだった20歳の若手がスポットワーカーとして勤務。当初は玉ねぎの洗浄や選果の補助を任せていましたが、現場で見せたのは「黙々と作業に打ち込む姿」と「若さゆえの馬力」でした。 本人の「農業への興味」と現場での前向きな姿勢が合致し、長期採用へ。現在は定植から収穫まで一連の主業務を担うスタッフとして、一度も欠勤せず誠実に活躍しています。
② 県外からの移住者が就農へ。技術継承の新たなカタチ(長野県・フルーツ農家)
果樹栽培の重要工程「摘果(てきか)」の補助業務の募集に、県外から移住したばかりの50代女性がマッチングしました。慣れない農作業にも非常に積極的に取り組む活動的な人柄と、丁寧で確実な仕事ぶりが農園主の目に留まりました。
現在は週3日勤務のパートスタッフとして勤務を継続されています。移住者という新しい風が、農繁期の現場を支える頼もしい即戦力となった事例です。
③現場での対話から隠れた才能を発掘。未経験の補助作業から「正職員」へ(静岡県・JAハイナン/ハイナン農業協同組合様)
当初は単発の勤務でしたが、仕事ぶりが評価され継続的な対話へと発展。その中で、前職での農業関連の販売やイベント企画に携わっていたというキャリアが明らかになりました。通常の求人媒体では応募が少なかった中、現場での実務を通じて本人の高い適性や専門スキルを直接確認できたことが決め手となり、長期採用への打診につながりました。まずはパート・アルバイトとして入職し、現場への理解を深めたのち、本年4月より正職員として登用。現在は事務や補助事業に従事していますが、将来的にはその経験を活かし、管内の農業を広く発信するイベント企画の担当者としての活躍が期待されています。
スポットワークを「お試し就農」のインフラに
今求められているのは、農業に関わる人口の分母そのものを増やすことです。今回の調査結果から、スポットワークは単なる「一時的な人手不足解消策」ではなく、「雇用のミスマッチ」を解消し長期採用に繋げるきっかけとなることが判明しました。
土に触れる機会が少ない若者が1日から農業に参加し、その中から将来の「担い手」が生まれていく。この「お試し就農のインフラ化」こそが、高齢化が進む現場を救い、持続可能な農業を創るための、最も現実的で強力な解決策となるのではないでしょうか。
タイミーではガイドブック・マニュアルの制作や業務切り分けの提案を通じ、農業未経験者でも即戦力として働ける環境作りを推進してまいります。
