フィッシャーマン・ジャパンとタイミーが業務提携。スポットワークで水産業の未来を切り拓く

フィッシャーマン・ジャパンとタイミーが業務提携。スポットワークで水産業の未来を切り拓く

2025年6月13日、 一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン(以下、フィッシャーマン・ジャパン)と株式会社タイミー(以下、タイミー)は、「水産業界の人手不足という深刻な課題解決と、漁業者の新たな働き方の実現」を目指し、業務提携を発表しました。

東日本大震災からの復興を目指し、石巻・三陸から日本の水産業を「新3K(かっこよくて、稼げて、革新的)」産業に変えるべく活動してきたフィッシャーマン・ジャパン と、1,100万人が登録する(2025年4月時点)スキマバイトアプリを運営し、「はたらく」を通じて人生の可能性を広げるインフラを目指すタイミー 。両者がタッグを組むことで、水産業の未来にどのような変革をもたらすのでしょうか。

今回は、同日に開催された発表式および、パネルディスカッションの内容をレポートします。

提携にかける思い——水産業の課題解決に向けて

FJM 代表取締役社長 津田祐樹さん(右)と葛⻄伸也

FJM 代表取締役社長 津田祐樹さん(右)と葛⻄伸也

取り組みの背景

今回の提携は、水産業界が抱える慢性的な「人手不足」と、閑漁期や時化(しけ)による漁師の「収入の不安定さ」という2つの課題解決を目指すものです。

日本にとって重要な産業のひとつである水産業は、近年深刻な人手不足に直面しており、業界全体を揺るがす課題となっています。2023年時点の漁業就業数は12.1万人であり、2048年には6.8万人まで減少することが予測されています。また、水産加工業の就業者数は2023年で13.3万人となっており、水産加工業者の5割近くが「従業者確保の困難」が課題であると回答しています(参照:水産庁『 2025年4月水産をめぐる事情について』)。

(投影資料より)

さらに近年、海洋環境の変化や休漁の影響で、漁師の収入が不安定になるケースも増えています。

今回の業務提携では、両者が培ってきたノウハウを活かしながら、最短数時間から水産業の仕事に携われる新しい仕組みを構築し、水産業の人手不足という喫緊の課題解決に貢献していきます。さらに今後は、漁師が他の漁師の仕事を手伝ったり、閑散期に異分野の仕事に従事したりするといった、漁師の働き方の多様化も後押ししていきます。

取り組み内容

本業務提携では、水産業の人手不足解消と漁師の新しい働き方の実現に向けて、フィッシャーマン・ジャパンとタイミーが連携をしながらさまざまなステークホルダーに対して下記内容に取り組んでいきます。

取り組み内容

(登壇資料より)

株式会社フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング 代表取締役社長 津田祐樹さんより

私たちは、東日本大震災を機に、被災した石巻・三陸の水産業の復興を目指して漁業者や魚屋が集まり設立された団体です 。法人設立は2014年で、漁師の担い手育成や人材支援を行う一般社団法人と、地域商社として水産物を国内外に販売する株式会社の2社で事業を展開しています。

水産業における「きつい・汚い・危険」という従来の3Kのイメージを「かっこよくて・稼げて・革新的」な「新3K」に変えることを理念に掲げ、これまで全国で550名以上の新規漁師を創出してきました。

フィッシャーマン・ジャパンでは、これまでも繁忙期と閑散期で地域をまたいで人材を融通する「 TRITON JOB SPOT」を立ち上げ、水産業の担い手育成事業に取り組んできました。事業を運営する中で、より短期的な、1日・数時間単位での人材確保の必要性を感じていたところ、偶然にもタイミーから連絡があり半年という短期間で業務協定に至りました。

株式会社タイミー 地方創生グループ マネージャー 葛⻄伸也より

私たちは「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするスキマバイトサービス「タイミー」を運営しています 。2017年に創業し、ワーカー(働き手)は面接や履歴書なしで仕事に就くことができ、給料は即日入金される手軽さが特徴です。

日本の労働人口の15%以上にあたる1,100万人が登録しており(2025年4月時点)、事業者側も最短1分で求人を掲載できることから、近年では人手不足が深刻な一次産業での活用も急速に拡大しています。この仕組みを他業界、特に水産業にも展開できるのではないかと考えたときに、水産業に深く入り込んで取り組みを進めているフィッシャーマン・ジャパンにお声がけをしました。今後は「業界への解像度を上げ、より現場に即した貢献をしていきたい」と考えています。

【パネルディスカッション】現場の声が語る、水産業のリアルと未来

続いて「水産業の人材不足対策と新しい働き方」をテーマにパネルディスカッションが実施されました。登壇者は以下の通りです。

株式会社布施商店 代表取締役社長 布施 太一さん(タイミー導入事業者様)
・宮城県漁業協同組合石巻地区支所青年部 副部長/一般社団法人はまのね 代表理事 亀山 貴一さん
・一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン 事務局次長 松本 裕也さん
・株式会社タイミー 社長室 地方創生グループ 一次産業チーム リーダー 千葉 連理
・株式会社 フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング 代表取締役社長 津田 祐樹さん(ファシリテーター)

パネルディスカッション

写真左から、布施太一さん、亀山貴一さん、松本裕也さん、千葉連理

——まず、皆さんに現場視点で、水産業界における人材不足の課題感についてお話を伺います。布施さんは、さまざまな水産物を扱われていますが、これまで人手が足りないときにどのように対応されてきたのですか?

布施 太一さん(以下、布施さん):……気持ちです (会場笑)。突発的に人手が必要になるのが水産の仕事ですが、急に人を探すことは難しい。そのため、これまでずっと、気持ちで対応してきました。ちょうどそのタイミングで、産休・育休に入る従業員もいたのですが、その方はまた戻ってくるため、わざわざ新たな人を長期採用する必要もなかったんです。いよいよ、自分たちの力だけで頑張るだけでは難しくなってきたと感じたときに、必要な時間だけ働いてもらえるタイミーを知って、使ってみることにしました。

——その「気持ち」が限界にきたときの、タイムリーな出会いだったわけですね。タイミーではどのような仕事を募集しているのですか?

布施さん:今の時期だと、牡蠣の殻のゴミ取り、磨き作業をワーカーさんにお願いしています。ちょうど今の時間も働いてもらってますよ。

——続いて亀山さんお願いします。亀山さんはご自身も漁師として働かれていますよね。

亀山 貴一さん(以下、亀山さん):私は、はまぐり堂というカフェを経営しながら季節ごとの魚介を獲る小漁師として活動をしています。この地域で言えば、牡蠣の養殖が盛んで、震災後以降はワカメの養殖も開始しています。牡蠣の出荷には、身を殻から剥がす「むき子さん」と呼ばれる作業員が不可欠ですが、震災による人口流出や高齢化によって減少している状況です。そのため、漁師が作業したり殻付のまま出荷している方も多いようです。ワカメもメカブ、葉、茎に分ける作業や塩蔵処理など、非常に多くの人手が必要ですが人手不足に悩まされています。

——震災前は、繁忙期に「浜のお母さん」が手伝ってくれるのが当たり前でした。しかし震災でコミュニティが失われ、必要な時だけ人の手を借りる仕組みがなくなってしまった。実はこの地域には昔から、短期的な働き手のニーズがずっとあったんですよね。では、フィッシャーマン・ジャパン側の考えも聞いてみましょうか。

松本 裕也さん(以下、松本さん):私は主に、水産業における人材周りの支援や採用定着、教育などいろいろ担当しています。

かつて、石巻の水産業を支えてくれていたのは、震災後に駆けつけてくれたボランティアの方々やアルバイトに来てくれる地元の水産高校生たちでした。しかし、震災から10年以上が経ち、そうした担い手もだんだんと少なくなっているのが現場です。この問題の根底にあるのは、「若者が水産業に触れる機会」自体が、非常に少なくなってしまったことだと感じています。これまでに、高校生に1日限定でアルバイトを体験してもらうような企画をイベント的に行ってきたのですが、なかなか継続的な関係にはつながりませんでした。そこで今、私たちが大きな可能性を感じているのが、若い方々にも身近な存在のスキマバイトサービスのタイミーです。

私たちの理想は、タイミーのマッチングを通じた仕事体験をきっかけに、そこで働く経営者の人柄や仕事の魅力に気づいてもらうこと。そして、それが継続的なアルバイトになり、将来的には長くこの業界に関わってくれる方が一人でも増えていく、そんな「道筋」を作っていきたいと思っています。

——続いて千葉さんにもお話をお伺いしたいのですが、実際に水産業の現場に赴き、仕事を体験。タイミーの活用方法を提案されていると伺いました。

千葉 連理(以下、千葉):はい。私は全国を飛び回りながら、漁業の現場でタイミーがどう役立てるか、日々模索しています。例えば1か月半ほど前には、北海道洞爺湖町で行われている「ホタテの耳吊り作業」の現場を見学しました。2週間前には長崎県の対馬市へ行き、魚の仕分けや計測、氷詰め作業など、私自身がスポットワーカーとして働いてきました。

実際に現場へ行くと、漁師さんからは「素人にお願いできるような簡単な仕事はないよ」とよく言われます。しかし、それは思い込みであることが多いんです。例えば、ホタテの耳吊り作業の中で「機械にホタテを置くだけ」という簡単な工程がありました。漁師さんに「これなら簡単そうですね」と聞くと、「こんなの小学生でもできるよ」と笑っていたんですね(笑)。このように、現場をよく見てお話を聞けば、お願いできる仕事はたくさんあります。重要なのは、専門的な作業の中から、そうしたシンプルな業務をうまく「切り出す」こと。そこを切り出すことさえできれば、すぐにタイミーで募集ができて働き手が集まります。

——布施さんに話を戻しますが、実際にタイミーを利用されていかがですか?

布施さん:もう数か月利用していますが、Good率は最高ですし、素晴らしい方々に働きにきてもらっていますね。もちろん、働き手さんごとに勘所は異なりますが、手が空いたら「この作業もやった方がいいですか?」など積極的に動いてくださる方が多く、とても助かってます。

——よい働き手に来ていただくために、タイミー側で何か仕組みがあるのですか?

千葉:働き手と事業者双方で、勤務後に評価する仕組みがあります。また、事業者様が教える手間が省けるよう、業務の切り出し方を一緒に考えたり、写真付きのマニュアルを作成したりするサポートも行っています 。実際、現場ではタイミーを通じて何度も働いているワーカーさんが、新しく来たワーカーさんに仕事を教えるという光景も生まれています 。

——タイミーが便利とは思いつつ、最初はハードルがあるとは思います。亀山さん、漁師の立場でいかがですか?

亀山さん:繁忙期のときだけ募集して、働いてもらえる仕組みは良いですよね。一方で、陸(おか)仕事に限定されてしまう部分があるとは思います。つまり、シンプルで簡単な業務しかお願いできない。漁師としては船上での作業も多いので、その部分にハードルがあるとは感じました。

千葉:おっしゃる通り、タイミーでは安全面を考慮して、遠洋に出ての作業は募集できません。しかし、まず働きにきてくださった方に、陸仕事や養殖のサポート業務をお願いする。良い方がいれば、長期雇用に無料で切り替えてもらうことが可能です。まずはタイミーを入口として使っていただくことをお勧めしています。

松本さん:私たちフィッシャーマン・ジャパンは、石巻市と連携して水産業の担い手を増やすための事業を進めています。これまで、ただ採用情報を出すだけでは「漁業は大変そう」というイメージが先行してしまい、人集めに苦戦してきました。しかし、タイミーのようなスポットで働く仕組みを用いれば、若者に水産業に触れてもらうための「第一歩」になると考えています。これは、人手不足に悩む事業者の方々に希望を与えるだけでなく、水産業の魅力を発信する「マーケティングツール」としても機能する可能性があります。

将来的には、この取り組みを通じて水産業との相性が良い人材を見つけ出し、その人たちが地域で長く活躍できるようなキャリアパスの仕組みを地域全体で作り上げていきたい。その実現のために、タイミーに大きな期待を寄せています。

——キャリアの話が出てきましたが、漁師さんの収入確保は大事です。漁師は時化でやることがないと、収入が減るだけでなく、乗り子さん(船員)やむき子さんをつなぎ止めるためにも、仕事がない期間の収入確保は死活問題ですよね。

千葉:まさにおっしゃる通りで、漁師さんが「時化で今日はダメだ」と思った瞬間に、港へ帰る船の上で次の仕事を探せるのがタイミーです 。港に着いたら、近くの飲食店や農家さんの仕事にすぐ向かうことができます。これまで漁業になかった「望まない休日をなくす」という新しい働き方を、この業務提携を皮切りに全国へ広げていきたいです。

——最後に、漁業関係者、および水産業界に従事する方たちに向けてコメントをお願いします。

漁業関係者、および水産業界に従事する方たちに向けてコメント

布施さん:驚いたのは、初めて求人を出したら10分で埋まったんですよ。「社長、もう埋まりましたよー」って報告があったんですけど、「え、もう?」と正直驚きました(笑)。募集を出したらすぐに人手が確保できるのはありがたい。もっといろんな作業を切り出していけたらと思っています。石巻市ではもっと働きたいという人もいると思うので、これからも活用していきたいですね。

亀山さん:今日の話を聞いていて、漁師の人手不足はもちろん、時化の時には僕が布施さんのところにタイミーを通じて働きに行ってもいいなと思いました(笑)。同じ水産業の中なら作業にも慣れているので、たぶん仕事も早いですしね。また、漁師が釣った魚がどのように提供されるのか、飲食店で働くのも良さそうです。

沿岸漁業は世襲制。これまで子どもに受け継がれていたものの、水産業をやりたい人は減っているし、漁船や資材を揃えようとすると数千万から数億円もかかってしまって参入ハードルは高いんです。そのため、フィッシャーマン・ジャパンさんが力を入れていた漁師のフリーランスのような新しい働き方を、スポットワークを通じて確立していけるのではないか、と期待しています。

松本さん:まずは今回の業務提携を通じて、石巻の事業者様と協力して、全国に発信できる事例を作りたいですね。先ほど津田も言ってましたが、全国各地訪問する中でどこも同じような課題が散在している状態です。どう仕事を切り出すか、どう(働き手と)ファーストコンタクトを取るかに悩まれています。そこで、震災から復興していったこの石巻だからこそ、発信していけると思いますし、全国における水産業の新たな人材確保のよい事例が作れるようになれば嬉しいです。

千葉:スポットワークは、「これまで関わることができなかった人を水産業に関わらせることができる」働き方です。例えば、会社員が朝5時〜6時に漁港で働き、その後に会社に出社するというスタイルも可能になります。水産業のメッカである石巻こそ、スポットワークとの相性が良いはず。同じように困ってる現場が日本全国にあるので、フィッシャーマン・ジャパンとの連携を通じて、スポットワークを日本全国に広げて行きたいと考えております。その結果、一気に働く人が増え、水産業は盛り上がると私は思っています。それができるだけ早く実現できるよう、タイミーとしても頑張っていきたいです。

——ここにいるメディアの皆さんもタイミーを通じて水産業で働いていただくことができますね!パネラーの皆さん、本日はありがとうございました。

スキマバイトサービス「タイミー」導入セミナー実施

当日は、石巻市の事業者に向けて、スキマバイトサービス「タイミー」導入セミナーを実施。今後も、オンラインセミナーを通じて事業者様の導入支援を行います。次回は6月27日(金)16時〜17時に開催予定です。( 申し込みはこちら

同日は新規リード開発部 飯野圭佑によって、事業者向けセミナーを開催

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