【売上2億円増を実現】赤字部門を黒字化した、JAにじの“攻め”の人材戦略

【売上2億円増を実現】赤字部門を黒字化した、JAにじの“攻め”の人材戦略

地方の農業協同組合(JA)において新しい外部サービスを導入することには高いハードルが伴うことが少なくありません。しかしその難関を乗り越え、人手不足と赤字解消を両立させたにじ農業協同組合(以下、JAにじ)の事例は今や他JAのモデルケースとなりつつあります。

舞台は福岡県うきは市にあるJAにじの農産物直売所「にじの耳納の里(みのうのさと)」。以前は深刻な人手不足により、十分な対応ができず機会損失が生じる場面もありました。スタッフの平均年齢も高く、募集を行ってもなかなか応募が集まらないという課題を抱えていました。

そんな状況を打破したのがスポットワークの活用です。歴史ある組織ゆえに新しい仕組みの導入には慎重な検討が求められる中、なぜスムーズな導入が実現できたのか。そしてなぜ単なる穴埋めではなく「売上増」に繋がったのか。

今回は、このプロジェクトを推進した、にじ農業協同組合営業部直販課課長の佐藤崇大さんに、導入に至るまでの戦略と、現場で起きた変化について詳しくお話を伺いました。

にじの耳納の里

にじの耳納の里
・にじ農業協同組合(JAにじ)
農家・組合員への営農指導や市場等取引先への農産物販売、直売所の運営、新規就農支援、信用事業、共済事業など。地域農業の振興と地域住民の生活向上に資する事業を展開している。
https://www.ja-niji.com/

まず動いて実績を作る。「度胸」が組織を動かした瞬間

──まずは「にじの耳納の里」が抱えていた課題について教えてください。

佐藤崇大さん(以下、佐藤さん):一言で言えば深刻な人手不足と高齢化です。直売所としてオープンして21年目になりますが、長く働いてくださるパートさんの平均年齢は高くなる状況でした。もちろん募集はかけますが、ここは田舎ですし新入職員の採用ですら苦戦する時代です。パート募集なんてまったく反応がないわけです。「田舎だから人が集まらないのは当たり前」「今いるメンバーで回すしかない」という諦めの空気が漂っていました。

にじ農業協同組合 営業部直販課 課長 佐藤崇大さん

にじ農業協同組合 営業部直販課 課長 佐藤崇大さん

──人手不足は実際の店舗運営にどのような影響を与えていましたか?

佐藤さん:「売りたくても売れない」という機会損失ですね。例えば施設内のアイス工房においては、赤字が続いていました。また直売所でも、午前中のピークタイムを迎えて農作物が飛ぶように売れても、バックヤードで荷受けや品出しをするスタッフがいない。そのため、棚がスカスカになってしまう……。本当はもっと商品を提供して売りたいのに物理的に無理がある状態が続いていたんです。

──その中で、佐藤様が自ら直販課の企画者として、この改善に取り組もうと志願された強い動機は何だったのでしょうか。

佐藤さん:私は企画部門に8年間在籍し、選択と集中の重要性を学んでいました。全国的にJAでは多くの事業が縮小傾向にある中で、直売所は比較的堅調に推移しており、地域の外から人を呼び込める可能性を持った、重要な事業だと考えました。売上を伸ばせる希望はここしかない、という強い思いから、直販課の企画者として取り組みをスタートしました。

──その強い意志を持って、この課題を解決するために、なぜ「スポットワーク」の導入を検討されたのでしょうか?

佐藤さん:もちろん、人手不足を解消したいのが第一です。ただ、それ以前に私は直売所をV字回復させるために、アイス工房における新製品開発など、売上を伸ばすためのさまざまな企画を検討していました。しかし、結局は人がいないと、何も実行できない。この状況を打破するため、従来の採用方法ではなく、「ピーク時間だけ手伝ってくれる」「圧倒的なスピードで人が集まる」方法が必要だと判断しました。そして、JAは新しいことの導入に時間やハードルがありますが、「初期費用がかからない」「試せる」というタイミーの特性が、その壁を乗り越える決め手となったんです。

──「人がいない」という現状を打破し、売上を伸ばす戦略を実行可能にするためにスポットワークが必要だったのですね。しかし、JAという組織柄、新しい外部サービスの導入には稟議や説得のハードルが高かったのではないでしょうか?

佐藤さん:そうですね。「こんな田舎にアプリで呼んで本当に人が来るのか?」「どんな人が来るか分からない」といった懸念は当然ありました。JAが外部サービスを新たに導入するには本店部署の承認を得る必要があるのですが、彼らも非常に多忙で通常の採用業務以外になかなか手が回らない状況。さらに、費用対効果が不透明な段階では、慎重な判断が求められます。そうした中で、少しでも前に進めるために、必要な情報を整理した起案書を自分で用意するようにしました。

──ご自身で準備されたのですね。具体的にどのように進めたのか、ポイントを教えてください。

佐藤さん:当たり前のことを着実に実行しただけですが、ポイントは3つです。

まず1つ目は、“人事部署と連携しながら業務を前に進める仕掛け”を作ったことです。判断がしやすくなるよう、必要事項を整理した起案文書を作成し、事前調整を行うことで、スムーズな意思決定につなげました。2つ目に、タイミー担当者とのオンライン商談に人事部署も同席してもらったこと。その場で不安払拭を行い、組織内での理解と安心感を醸成するようにしました。最後3つ目は、“低コストで試せる”点を押し出して説得したことです。成功するかどうかわからないのに費用をかけるのは怖いですよね。そこで「初期費用がかからない」ことに加え、「時給換算すれば1,500円程度で、派遣会社を使うのとコストは変わらない」「必要な時間帯だけスポットで呼べる」というメリットを提示。また、「そもそも人材が集まるのかどうか状況把握のために使いませんか?」とトライアルであることを強調しました。

実は、企画部門に所属していた際、完璧を目指さず「30点の出来」で出した資料がきっかけで、農水省や県の中央会を巻き込む大きな動きにつながったことがありました。そのときに学んだのは、「完璧な計画を練ってから動くより、まず動いて実績を作る方が早い」。その確信があったからこそスピーディーに進められたのだと思います。

起案文書参考イメージ

【導入目的】

  • 直販課(繁忙期時)店舗の人手確保が目的
  • 繁忙期となる6月7月以降のために、事前に試したい

【概要】

  • 働き手の「働きたい時間」と企業側の「働いて欲しい時間」をマッチングするサービス
  • 企業は来てほしい時間や求めるスキルを設定するだけで、条件に合った働き手を呼ぶことが可能
  • 周辺エリアでは〇〇が利用している(〇月現在、アプリ上で把握)
  • 利用者の約7割が20~40代
  • 完全成果報酬型でタイミーが立て替える仕組み。直接バイト代を支払う必要がない

──しかし、スポットワークを導入する際、「履歴書・面接もなしに、どんな人が来るのか」といった不安はなかったですか?

佐藤さん:正直に言うと、そういう不安しかなかったですね(笑)。大前提、人が集まるのかはもちろんですが、「どんな人が来るのか」「スキルにばらつきはあるのか」「ドタキャンされるのではないか」「労務事務周りはどうなるのか」など、不安があったのは事実です。その不安のどれもがやってみないとわからないことでした。ですが、過去に派遣も使っていたがうまくいかなかった経緯もあり、コストをかけずに試せるなら、やるしかないという「度胸」で進めました。

2〜3分で募集が埋まる衝撃。タイミー活用で赤字350万 ▶︎ 黒字400万へ

──不安はたくさんあったと思いますが、実際にタイミーを導入してみていかがでしたか。

佐藤さん:衝撃でしたよ。「田舎だから集まらない」というのは完全に我々の思い込みでした。募集を出してクリックしてから5分でもうマッチングするんです。他社のサービスと比較検討することもありますが、正直、他のサービスを使う理由がないですね。だってタイミーで募集すればすぐに埋まるんですから。

──そのマッチングスピードを具体的にどう売上につなげたのでしょうか。

佐藤さん:大きく成果が出たのは「アイス工房」と「バックヤード」です。 アイス工房はこれまで年間350万円ほどの赤字でした。そこで夏場にかき氷をやろうと思いついたんです。直売所なので、規格外品という「もの」はある状態。廃棄も抑えられるし、売り上げにもなるのに、これまでは人手が足りなくてやりたくてもできない状態でした。

そこで、ワーカーさんに「かき氷を作る(削る)」という単純作業をお願いしました。 職員は接客や複雑な業務に集中し、ワーカーさんがひたすら氷を削る。これにより原価率を抑えた商品提供を続けることができ、結果として単年度で400万円近い黒字に転換しました。

規格外とは思えない桃が1つのったかき氷。狙った通り黒字化の起爆剤に

規格外とは思えない桃が1つのったかき氷。狙った通り黒字化の起爆剤に

──それはすごいですね!バックヤードへの導入はいかがでしたか?

佐藤さん:アイス工房で感覚をつかんだので、今年度からバックヤードにタイミー人材を導入し試したところ、予想通り品物を捌ける体制が整いました。入荷の状況を見ながら、タイミーを活用して働き手を募集。商品を絶えず売場に補充する体制を作ることができました。

その結果、例年に比べて仕入れ量が2倍以上になった月もありますし、直売所全体の売上は昨対比で1億5,000万〜2億円ペースで伸びています。物が出せることは、農家さんの売上貢献にもつながります。つまり、最初トライアルでスタートしたタイミー導入でしたが、単なる人件費ではなく売上を伸ばすための先行投資として活用できたと感じています。

包装などを任せることで、売り場に商品がゼロと言う状態がなくなった

包装などを任せることで、売り場に商品がゼロと言う状態がなくなった

──どんな人が来るのか、スキルにばらつきがないかなど、導入当初に感じていた不安は解消されたのでしょうか?

佐藤さん:働く方の条件設定(コミュニケーションが取れる方など)をしているからかもしれませんが、非常に良い方たちにお越しいただいてます。例えば、かき氷作りだけではなく、商品の受け渡しや声掛けといった接客までしっかりと対応してもらえることに驚きました。スキルが高いワーカーさんたちが多く、商品の提供スピードも上がり売り上げも順調に伸びていますね。また、実際に働いてくださった方たちからいただいた評価はGood率99%〜100%と非常に高く、「楽しかった」「優しく教えてくれました」というコメントが寄せられています。

個人的に良いなと思ったことがあるのですが、ワーカーさんが働いてくださることで、「物がどういう流れでお店に出るのか」という裏側を見れるというのが非常に大きいんです。ワーカーさんとして働いてくださった方が直売所の裏側を知ることで、単純なお客様から、もう一歩近い位置でのアクション、つまりファンになってくれていると感じています。また、働いてくれる方には女性が多く、主婦層の方が空いている時間に働いてくださるため、地域での就業機会の創出にもつながっているのではないでしょうか。

──高いGood率を誇っているとのことですが、受け入れ側として大切なことは何でしょうか?

佐藤さん:「ワーカーさんが来てくれれば全部OKというわけではない」ということです。 実は1年ぐらい前にもバックヤード業務でタイミーを活用したことがあったんです。しかしその時は我々側がうまく指示ができずに失敗に終わってしまいました。募集をかければ、後はワーカーさんが勝手に働いてくれるという思い込みは間違いで、うまくいかないのも当然です。

その反省を活かし、今年は指示役を明確にする体制を整えました。「教えるのはめんどくさい」ではなく、たとえスポットのワーカーさんであっても「一緒に職場を盛り上げていこう」という気持ちを持って職員を巻き込んでいく。我々側も受け入れ体制をしっかり用意することが現場の負担軽減と成功には不可欠だと思います。実際、既存のパートや学生アルバイトにとってもほどよい緊張感が生まれ「自分がだらけていたらワーカーさんに置き変わってしまう」という意識が芽生えています。とはいえ、ワーカーさんばかり特別扱いに見えないような配慮は徹底していますし、誰しもが気持ちよく動けるチーム作りを心がけていますよ。

人手確保の不安が消えたら、もっとJAは「攻め」られる

──人手不足の解消が、売上以外の面にも影響を与えていますか?

インスタグラムにも力を入れる

佐藤さん: そうですね。「人手の確保」に対する不安がなくなったことで本来やるべき「ファン作り」や「広報活動」に注力できるようになりました。「佐藤さん、幅広くやってますね」と思われるかもしれませんが、実はうちの組合長が誰よりも一番動いているんです。自らセールスをしたり広報活動をしたり……。そんな姿を見ているので私たちも負けていられません。

現在「耳納の里」のお客様の半分は市外からの方です。もっと多くの方に来ていただくためにInstagramでの発信を強化したり、音楽イベントを開催したりと新しいことに挑戦しています。タイミーで現場が回る安心感があるからこそ、こうした攻めの活動ができているのだと思います。

Instagramでは、佐藤さん自ら商品を紹介

Instagramでは、佐藤さん自ら商品を紹介

──今回の成功事例を、今後他の部門へ展開していくお考えはありますか?

佐藤さん:今年の取り組みの結果、バックヤードだけでなく、直売所以外の部門でも活用できると確信しました。今はタイミーの募集作業と当日のワーカーさんマネジメントは役割分担をしていますが、タイミー導入は誰でも運用しやすい仕組みが整っているため、専門知識がなくても判断できます。スマホで募集状況や出退勤管理ができるので、現場判断が格段に早くなったのも大きいですね。(編集部注:実際に取材中に「今日の12時からタイミーを募集する」と判断され、10時ぐらいに募集開始。5分でマッチングしていました。)

この成功体験は、他の部門の職員にとっても「やってみよう」というきっかけになると信じています。

──最後に導入を検討している方へメッセージをお願いします。

佐藤さん: 「田舎だから」「古い組織だから」というのはやらない理由にはなりません。ワーカーさんの中には、初めて「にじの耳納の里」に来る方もいます。働く場を提供することで地域外から人を呼び、地域に貢献する拠点にもなっています。働いてくださったワーカーさんがご家族やご友人に話して、口コミが広がったり、地域の回遊性や購買機会の増加につながったりと、認知度を含め全体の活性化にも寄与していると感じています。

「どうせ、募集出しても人はいないでしょ?」という思い込みを捨てて、まずは一度ポチッと募集を出してみてください。たった数分で人が集まるスピード感とそこから生まれる現場の活気を知れば、きっと「なぜもっと早くやらなかったんだ」と思うはず。この新しい働き方の価値を試していただきたいと思います。

持続可能な事業運営を目指して【JAにじ 代表理事組合長 右田英訓さんコメント】

JAにじ 代表理事組合長 右田英訓さん

JAにじ 代表理事組合長 右田英訓さん

当JAでは、直売所をはじめ各事業で人手不足が深刻化する中、繁忙期や突発的な欠員に柔軟に対応できる手段として、担当部署からの提案を受け、タイミーの導入を判断しました。必要な時に必要な人材を確保できることで、現場の負担軽減と業務の安定につながっています。今後も、現場の声や担当者の挑戦を後押ししながら、新しいサービスを取り入れ、持続可能な事業運営を目指していきます。

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