【NoMaps2025 レポート】スポットワークは地域を救うか? 連携自治体×タイミーの本音トークセッション

【NoMaps2025 レポート】スポットワークは地域を救うか? 連携自治体×タイミーの本音トークセッション

2025年9月10日〜14日、札幌の街を舞台に開催された「 NoMaps2025」。10周年を迎えた今年、満を持して「Government」カテゴリーが新設されました。タイミーは、本カテゴリーのスポンサーとして、官民連携のワークショップや先進事例を知るセッションを支援してきました。

注目テーマの一つである「連携自治体と描くスポットワークによる持続可能な地域づくり」と題されたこのセッションでは、スキマバイトアプリを展開する株式会社タイミーと連携する3つの自治体の担当者が登壇(※)。モデレーターを務める株式会社タイミーの増田さんと共に、地域が抱える課題や官民連携のリアルなど、本音トークを繰り広げました。

官民連携のリアルな葛藤、そして「公務員の副業」という新たな挑戦が地域に何をもたらすのか——。熱気あふれる会場の様子とともにお届けします。

・函館市 経済部雇用労政課 課長 山村 英次さん
・清水町役場 町民生活課 参事 前田 真さん
・大空町役場 まちづくり推進室 主査 田村 隆明さん
・株式会社タイミー 社長室 地方創生グループ 増田 匡(モデレーター)

※各社協定締結リリースはこちら。清水町大空町函館市(協定順)

「1時間の壁」「牛が支配する町」—人手不足に悩む自治体の次の一手

——本日はお集まりいただきありがとうございます。本日ご来場いただいている方は自治体職員の方がほとんどということで具体的なお話もできればと思います。早速ですが、皆さんの自治体ではタイミーと連携する以前は、どのような課題を抱えていたのでしょうか?まずは函館市の山村さんからお願いします。

—人手不足に悩む自治体の次の一手

山村 英次さん(以下、山村さん):他地域に例外でなく、函館市でも人手不足という問題には頭を抱えている状態でした。そこで「働きたい意欲はあるけれど、何らかの理由で働けていない方がどれだけいるのか」を可視化するため、住民に向けての実態調査を行いました。曜日やら時間やら結構細かく分析したのですが、その中で興味深い結果がありまして。小学生までのお子さんがいる方の「希望する勤務開始時間」は朝9時が最多という結果が出たんですね。一方で、実際にその層の方が働いている職場は8時始業がほとんどでした。このたった1時間ではあるものの「1時間の壁」が、働く上でのネックになっているのではないかと感じました。

函館市 経済部雇用労政課 課長 山村 英次さん

函館市 経済部雇用労政課 課長 山村 英次さん

実は、私の妻からも「私も含め、子育て世代の多くは働きたいと思っている。ちょっとでもいいから社会とつながっていたい」と言われたことがあって……。データと実体験の両方から、「短時間でも柔軟に働ける仕組み」の必要性を痛感していました。

——数値だけでなく、ご自身の家庭での会話がきっかけの一つになったというのは、非常にリアルですね。清水町の前田さんはいかがでしょうか?

前田 真さん(以下、前田さん):清水町は人口8,500人ぐらいしかいない小さな町です。それに対して牛が6万頭。私は「牛に支配された町」と呼んでいます(笑)。住民にヒアリングをすると、決まって「優れた資源や良いところがたくさんあるのに、それをうまく使い切れていない」という声をいただくことが多い状態です。

そして、もちろん「産業の担い手不足」という大きな課題がありました。タイミーさんとの連携協定につながるきっかけとなったのは、保育士が足りないこと。民間の保育所がない田舎の自治体では、役場が保育士を確保しなければならない。しかし、この小さな町において人材を集めることは非常に難しいのが現実です。この専門職不足をどうにかできないかと調べていく中で、短時間だけ働く「スポットワーク」という働き方に行き着きました。

加えて、以前にAirbnbという民泊のマッチングプラットフォームと連携した際に、町を訪れた方々が「1日だけ農業体験をしてみたい」「余っている時間で、ちょっと働きたい」といったニーズを持っていることも分かっていました。そういった、地域が抱える課題と訪れる人々の小さな要望。その両方の困りごとを解決するために出会ったのが、タイミーさんだったんです。

——大空町の田村さんはいかがですか?

田村 隆明さん(以下、田村さん):大空町も清水町が抱える問題とまったく同じで、特に農業分野での人手不足が深刻でした。私は移住・定住の担当ですが、以前から移住定住支援の一環として、農業バイトの斡旋や無料の職業紹介所を開設して人集めをしていたんです。ただ、いかんせん町のホームページで募集をかけても、なかなか他の地域の方は見にきてくれないですし、人が思うように集まらないという壁にぶつかっていました。

大空町役場 まちづくり推進室 主査 田村 隆明さん

大空町役場 まちづくり推進室 主査 田村 隆明さん

そんな時にタイミーさんと出会い、多くのワーカーさんが見るプラットフォームを活用できることに大きな可能性を感じました。タイミーさんとの連携を通じて、「働き手が見つかるだけでなく、町の知名度向上にもつながるのでは!」と。

そこで、商工会やJAめまんべつ、観光協会など5者で包括連携協定を結びました。現在は、移住されてきた方の働く場所の確保や、交流人口の増加を目指しているところです。

先日、JAめまんべつ(女満別町農業協同組合)で農家さん向けに説明会を開いたのですが、説明会後すぐに求人を出してみるとすぐに埋まりました。非常に驚きましたね。さらに、多くの事業者さんからも「こういうのを待っていたんだよ!」という声を直接いただくことができました。町民の方に喜んでいただけることが役場職員として一番のやりがいですから、このようなポジティブな反応は本当に嬉しかったです。

——田村さんのすごいところは、農家さん向け説明会の際も、「とりあえず登録しちゃいましょうよ」と、ガンガン周りの背中を押しているところ。我々の説明だけでは、なかなか動きづらい方も多い中で、非常にありがたいです。

官民連携のリアルな壁。「議員や庁内関係者」はどう口説いた?

——新しい取り組みを始めるには、庁内や議会の調整など、さまざまなハードルがあったかと思います。官民連携のリアルな部分についてお聞かせください。

「議員や庁内関係者」はどう口説いた?

前田さん:一番苦労したのは議会対応ですね。「スポットワーク」や「アルバイト」という言葉に、イデオロギー的に嫌悪感を示す方もいらっしゃって……。

これは決して終身雇用を否定するものではなく、むしろこれをきっかけに長期雇用に繋がる可能性を秘めた、新しい働き方の選択肢なのだと。そういったことを一人ひとり丁寧に説明して回りました。

田村さん:うちも同じです。大空町は小さい町なので、職員同士ですぐに連携しスムーズに話を進めることができましたが、僕の場合も、新しい働き方について議員を直接説明しにいきました。「町民が困っているんです。ぜひ連携協定を行い、スポットワークを広めさせてください!」と。町の金銭的な負担はないのか?と聞かれれば、「費用はかかりません!」と(笑)。

どの議員も、雇用を生み出すことに課題を感じているのは共通しているので、一人ひとりが感じているスポットワークについての理解度合いを確認しながら、時間をかけて説得していきました。

——中核市である函館市では、また少し事情が違ったのではないでしょうか?

山村さん:そうですね、中核市の場合、また少し事情が違うかもしれません。周りに相談しても、まず言われるのは「でも、実績はないでしょ?」でした。1人で好き勝手に動いて「なんか変なやつが1人で盛り上がっている」と腫れ物扱いになってしまってはうまくいきません。そこでまずは庁内で仲間探しから始めました。介護や産業振興といった関係部局の職員たちを集めて勉強会を開いたんです。説明会終了後、わざわざ私のところまで来て「面白いですね」と声をかけてくれる職員もいました。役所も捨てたものじゃないなと思いましたね。

——中核市の場合、まずは庁内からどんどん仲間を増やしていくということですね。協定前はもちろん、協定後もこのような動きが大事になると思います。

まずは庁内からどんどん仲間を増やしていく

山村さん:さっきもお話ありましたけど、このスポットワークって単純な一時凌ぎのアルバイトじゃなくて、働いたことで、会社を理解し、長期採用につながるんですよね。やはりそこは省略することなく、ブレずに理解者を増やしていきたいと考えています。

函館市では連携協定を結んだのが直近なので、これから具体的な取り組みを進めていく段階ですが、引き続き関係部局と意見交換をしながら進めていきたいです。

「事業者の不安」を解消した、全国初・公務員のスポットワーク体験

——このような経緯で、それぞれの自治体と連携協定を結んだわけですが、その中で前田さんは、ご自身がタイミーを通じて働くという「全国初の公務員副業」に挑戦されました。これはどういった経緯だったのでしょうか?

前田さん:事業者の方々がスポットワークを導入する上で、一番のハードルが「どんな人が働きに来てくれるのか分からなくて怖い」という不安でした。履歴書を見て面接をする、という従来の採用に慣れている方々にとっては当然の感覚です。

その不安をどう解消するか考えた時に、「それなら、まず僕ら役場職員が実験台になろう」と。町で一番信用があるはずの役場職員が働きにいくことで、事業者の皆さんに安心感を持ってもらえるのではないかと思ったんです。

そこで、地方公務員法に則って、「給与が発生しない土日のみ働くこと」「自分の仕事のスキルアップにつながる」という要件を満たした上で実施しました。

清水町役場 町民生活課 参事 前田 真さん

清水町役場 町民生活課 参事 前田 真さん

——素晴らしいアイデアですね。実際に働いてみていかがでしたか?

前田さん:自治体職員って、現場を知らないまま政策を作りがちです。でも、実際に数時間でも働いてみることで、生産者や事業者の本当の気持ち、現場の課題が身をもって理解できる。これはものすごく大きな収穫でした。人々の気持ちや喜怒哀楽に寄り添うには、まず自分たちが現場を知ることが不可欠だと改めて感じましたね。

——ありがとうございます。現場を知ることは大事ですよね。ちなみに大空町や函館市では職員の副業についてどのような状況ですか?

田村さん:大空町では、一次産業であれば届出を出せば副業は可能です。ですので、タイミーを使って副業をしてみることは制度上できます。まさに大空町では一次産業分野の人手不足が顕著ですから、職員が業務内容を体験してみることで、よりニーズに寄り添った施策を考えるきっかけになると感じました。

山村さん:現状、函館市では、副業は原則禁止です。ただ、調査をすると「副業をやってみたい」という職員の声は思った以上に多いのが実態です。これもまた、地域に眠っている貴重な労働力なのだと感じています。お二人のお話を聞いて、タイミー活用の可能性がまた見えてきましたね。

スポットワークが拓く、持続可能な地域づくりの未来

——最後に、連携協定後の手応えや、今後の展望について一言ずつお願いします。

株式会社タイミー 社長室 地方創生グループ 増田 匡

株式会社タイミー 社長室 地方創生グループ 増田 匡

田村さん:正直に言うと、最初は「こんな田舎で本当に働きに来てくれる人なんているのかな」「この協定無駄になるんじゃないか」と不安がありました。でも先日、新聞社の取材である牧場に同行したときに、北見市から30回以上も働きに来てくれたリピーターさんがいることを知りました。その方はもう、一人で子牛にロープを付けて引っ張れるくらい頼もしい戦力になっていて(笑)。その姿を見て「これはすごい戦力になる」「労働力はもちろん、関係人口創出にもつながる」と実感しました。

農家さんからも「こういうのを待っていたんだ」という声を聞けて、本当にこの協定はやってよかったなと。引き続き、町民にとって、町にとって何を行うべきかを考えていきたいです。

前田さん:公務員副業の事例をお話ししましたが、いずれの施策にしても、究極的には「どういった働き方が人々の豊かな人生につながるのか」という問いかけだと思っています。タイミーというプラットフォームを有効活用して、町に住む人、関わる人みんなが、さらに豊かになれば嬉しいです。

山村さん:今日、皆さんの話を聞いて、改めて「仲間探し」の重要性を感じました。全国的な人手不足という問題を解決していくためには、庁内はもちろんですが、地域を超えた仲間が必要なのだと実感しています。もしこの話を聞いて面白いと思ってくれた他の自治体の方がいれば、一緒に何かやりましょう。私たちの仲間探しの旅は、まだ始まったばかりですから。

——今日登壇いただいた皆さんは、自治体の中でも強い想いを持って地域の課題解決に向けて取り組んでいただいている、まさに「スーパー公務員」と呼ばれる方たちだと思います。本日は熱いお話を本当にありがとうございました。

スポットワークが拓く、持続可能な地域づくりの未来

セッションを通じて見えてきたのは、人手不足という深刻な課題に、官民が連携して知恵を絞り、果敢に挑戦する自治体の姿でした。スポットワークは、単なる労働力の確保に留まらず、地域内外の人の交流を生み、事業者の意識を変え、そして行政職員自身が現場を知るきっかけにもなっています。持続可能な地域づくりの鍵は、こうした柔軟な発想と、枠を超えて繋がる「仲間」の存在にあるのかもしれません。

山村さん、前田さん、田村さん3名による先進的な挑戦は、この記事を読む全国の自治体関係者にとって、次の一歩を踏み出すための大きなヒントとなるでしょう。

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