- 多くの自治体で感じた、「仕事」という課題
- 地方創生のカギは潜在労働力の掘り起こし
- 自治体×タイミーで生まれる価値
- 協定締結から1年で「募集人数27倍」を実現 ー岐阜県下呂市の事例ー
- 誰でも働くことができる「持続可能な日本」を目指して
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「すぐに働きたい人」と「すぐに人手が欲しい企業」をつなぐスキマバイトプラットフォームである「タイミー」。その利便性は、企業の人手不足解消のみならず、個人の柔軟な働き方を支援するツールとして認知を広げています。
近年、タイミーは全国の自治体との取り組みを加速しており、2025年5月8日時点で、34自治体との連携協定を締結しております。その背景には、単なる労働力マッチングを超えた、地域経済の活性化、雇用創出、そして深刻化する社会課題の解決に貢献したいという強い意志があります。これは、地域活性化を目指す自治体と、地域に根差した働き方を創出したいタイミー双方にとって、大きなメリットをもたらす戦略と言えるでしょう。
本記事では、タイミーが自治体との連携を強化する具体的な理由とその先に広がる可能性について、スポットワーク研究所 地方創生グループ マネージャー 葛西伸也にインタビューを実施しました。
※所属部署名・肩書などは取材当時のものです。
青森県出身。中小企業支援を行う企業や、地方都市への企業誘致コンサルタント、新規事業開発を経てタイミーへ入社。現在は地方創生部門(地方自治体・一次産業・商工会議所)の責任者として、雇用対策・関係人口創出の自治体連携事業に取り組んでいる。
多くの自治体で感じた、「仕事」という課題
私は青森県出身で、漠然と「都会への憧れ」を持っている、どこにでもいるような子どもでした。大学進学を機に上京し、就職活動をスタートした時が、「地元や地方への貢献」について深く意識するようになりました。
就職活動って「自分の好きなことは何か」と自己分析をするじゃないですか。すると、地元で過ごした時間が、自分でも意外なほど大切なことだったと気づいたんです。そこで「地方への貢献」をキーワードにさまざまな企業を探す中で出会ったのが1社目のベンチャー企業。全国のフランチャイズ支援やビジネスマッチングを行っている会社でした。
その会社の考えが、「日本の企業の99%が中小企業で、そして、日本の労働者の70%が中小企業で働いている。(※編集部注:総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」)中小企業の活性化なくして日本の活性化はない」というもの。とても共感しましたし、地方にある中小企業に対して貢献できるのではないかと思い、就職を決めました。
そこでは、労働力不足に悩む学習塾や学校に向けた教育システムの立ち上げプロジェクトに従事。その後、たまたま「地方創生の部署を立ち上げるから、参加しないか?」とお誘いを受け、人材系の企業に転職をしました。
転職先では、企業誘致や、それに付随する人材採用、Uターン支援や調査など、さまざまな地方自治体のプロジェクトを担当しました。多くの自治体の現状を見ていくなかで改めて気づいたのが、自治体にとっても、そこで暮らす個人にとっても、やはり「仕事」が大事で、同時に大きな課題だということ。人手不足に悩む地域の中小企業や、働き方の多様化を求める労働者にとって、最適な提案をしたいと考えていたときに出会ったのが、タイミーだったのです。
地方創生のカギは潜在労働力の掘り起こし
今、多くの自治体が人口減少を起因とする労働力不足の課題に直面しています。労働力が不足すると、地元産業の維持・発展ができない。すると、その地域に仕事が作れず、人口が減り、税収が減り、結果的に都市インフラの維持も難しくなる——というスパイラルに陥ってしまう。多くの自治体において、決して他人事ではない、身近な問題なのではないかと感じています。解決策として、国策でもある外国人労働者の採用や事業のDX化といった方法はあるでしょうが、最もダイレクトで有効な方法は「眠っている労働力の活用だ」とずっと考えていました。
タイミーは「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングすることで、時間や場所に制約されない自由な働き方を提供するスキマバイトサービスです。例えば、育児や介護などで時間的な制約がある方、短時間だけ働きたい会社員、長期休暇を利用して帰省する学生など、さまざまな「働きたい」というニーズに応えることで、その地域に新たな労働力を創出することが可能です。
タイミーは都心部はもちろん、労働力不足に困っている地域にこそ、ご利用いただきたいサービスであると考えています。
自治体とタイミーとの連携協定はまさに、従来のやり方だけでは解決できない、労働力確保を通じた地域活性を目指すもの、そして地域ごとに違った新しい地方創生の仕組みを創るためのものです。連携協定を締結し、タイミーのプラットフォームを有効に活用いただくことで、予算を抑えながらその地域での仕事を生み出し、働き手を誘致できる。タイミーとして自治体との協業を強化するべきだと考え、地方創生の部署を立ち上げました。
自治体×タイミーで生まれる価値
「タイミーと連携することで何ができるのか」と疑問に思われている方もいるかもしれません。地方創生グループでは、各自治体が抱える課題にパートナーとして向き合っている自治体専任チームを結成しており、民間ならではの視点とスピード感で、自治体の課題を整理し、タイミーを起点とした施策の提案を得意としています。
例えば、働き手に対しては、インバウンド需要に応えるための宿泊施設での技術研修、町外からの働き手を対象にした交通手段確保など、枠にとらわれずに労働力確保に向けた提案を行いますし、事業者に対しては、タイミー活用のための支援セミナーの開催に留まらず、業種別ごとの業務整理や切り出し、現場のオペレーションが円滑に回るための導入支援を行います。これまで培ってきたノウハウや実績を活かし、両軸バランス良く提案することを心がけるようにしてきました。
その際、全国1,000万人の登録者(2024年12月時点)を活用した労働力調査情報の提供も進めていきたいと考えています。このデータを活用いただくことで、労働政策を考える際の有効なツールとなり、本質的な課題解決につながるはずです。
また、私たちは横のつながりも大事にすることを意識しています。人口規模や基幹産業も違うさまざまな自治体との協定実績を活かし、同じような状況や課題感を抱える自治体同士のネットワーキングの場も提供。同じ課題を持つ担当者同士の情報交換、そして先進事例を知る機会の提供は、各自治体が持続可能な施策の検討を行うために必要であると取り組みを続けています。
地域の事業者への呼びかけと、働く個人の掘り起こし、自治体同士の情報共有、これらを同時に実施しながら、タイミーというプラットフォームを通じて仕事と人が継続的にマッチングしていく環境を創る。私たちが目指しているのは、地域産業の維持・発展自体を「持続可能」にするための協定です。
協定締結から1年で「募集人数27倍」を実現 ー岐阜県下呂市の事例ー
現在、34の自治体と協定を結んでおりますが(2025年5月8日時点)、最初に連携協定を結んだのは、観光業と農業を基幹産業とする下呂市でした。ちょうど「半農半X」の取り組みを強化されている最中で、収穫時期などの繁忙期にだけ多くの労働力を必要とする農業とスポットワークの親和性を感じたとのこと。例えば、主婦層や高齢者などの潜在労働力へのアプローチについてご相談いただきました。
打ち合わせを重ねる中で、市内にはすでにタイミーの登録者がいるにも関わらず、働く場所の不足により登録者の多くが市外で仕事をしていることが判明。登録者のポテンシャルだけを見れば、農業だけでなく観光業や飲食業の労働ニーズもタイミーでカバーできる可能性を感じました。そこで、ゆくゆくは医療や介護といった分野でもスポットワークを活用したいと、連携協定締結に至ったのです。
その後、市の担当者様と共に、業種別の説明会を複数回実施するなど、仕事と人のマッチングを創出するための取り組みを強化。自治体はもちろん、関係各所の協力もいただいたことで、2023年の協定締結時点から1年でタイミー登録事業所数は約4.4倍、求人の募集人数は約27.3倍、登録者数は約2.5倍と大幅な増加を実現できました。さらには、それまで見られなかった市外の登録者が働きにくるなど、市外からの関係人口の創出という効果も生まれています。
2年目には子育て世代向けの勉強会を実施するなど、取り組みの幅は広がり続けています。
誰でも働くことができる「持続可能な日本」を目指して
当社のミッションは「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」です。私たち地方創生グループが目指しているのは、老若男女誰もが働くことができる場所を創っていくこと。しかし、現在私たちが関与できているのは一部分であり、挑戦を始めたばかりです。
企業と自治体の連携協定は、形骸化するという声を聞いたことがありますが、私たちにとって協定締結はあくまでもスタート地点。協定締結後も、定例ミーティングや訪問を通じて時宜に即した課題について議論を重ねることを意識し、働き手および事業者に対してサポートしていくことを心掛けています。もちろん、連携協定を締結しているかに関わらず、どのエリア、どの自治体に対してもその姿勢は変わりません。
スポットワークという新しい働き方によって実現できる地方創生の形を、是非一緒に創っていければと思っています。多様性があり持続可能性がある日本になるために、私たちは挑戦し続けます。