「働く」を入り口に、人はもっとつながれる。佐伯市民が本音で語り合った、新しい働き方と地域の可能性

「働く」を入り口に、人はもっとつながれる。佐伯市民が本音で語り合った、新しい働き方と地域の可能性

人口減少や労働力不足という地方共通の課題に対し、大分県佐伯市が新たな一歩を踏み出しました。

2025年2月、佐伯市は株式会社タイミー、株式会社大分銀行、一般財団法人観光まちづくり佐伯と包括連携協定を締結しました。「人と自然が共生する持続可能なまち『さいきオーガニックシティ』の実現を目指す佐伯市」、「持続可能な地域づくりを目指す『地域ビジョン』に取り組む大分銀行」、そして「佐伯が保有する資源の磨き上げと結びつきの活用を通して地域価値の向上を目指す観光まちづくり佐伯」。これら4者との強力な連携のもと、スポットワークの活用によって佐伯市が抱える課題を解決することを目的としています。現在、多様な働き手確保と市内経済の活性化を推進する取り組みを推進しています。

その取り組みの一環として、市民が主役となって地域の未来を語り合うコミュニティ「しゃべり場」にて、スポットワークをテーマにしたワークショップが開催されました。単なる労働力不足の解消にとどまらず、働くことを通じて「人」と「地域」がどうつながれるのか。佐伯市ならではの働き方や可能性を探った当日の様子をお届けするとともに、佐伯市 地域振興部 地域振興課 ふるさと振興係 課長補佐兼総括主幹 戸髙さん、地域振興部 地域振興課 ふるさと振興係 副主幹 山本さん、しゃべり場の運営代表である福井さんにもお話を伺いました。

スポットワークを“自分ごと”に。しゃべり場のワークショップレポート

今回の開催は12回目。これまでに「空き家、空き地(畑・山)の利活用」「地域の防災」といったまちづくりに関するテーマで実施されています。

スポットワークを“自分ごと”に。しゃべり場のワークショップレポート

まずは、株式会社タイミー 社長室 地方創生グループの三好幸恵によって、タイミーの紹介を実施しました。

株式会社タイミー 社長室 地方創生グループ 三好幸恵

株式会社タイミー 社長室 地方創生グループ 三好幸恵

参加者の全員がタイミーを知っていましたが、まだ活用したことがなかったとのこと。「いろんな仕事ができるんだ」「自分もやってみたい!」といった声が挙がりました。中には、スマートフォンを持っていない高齢者のために「市役所がスマートフォンを貸し出すのはどう?」などと、市民に寄り添り沿ったアイデアが出たのも印象的です。

タイミーのことを知ってる人が多くいらっしゃいました

タイミーのことを知ってる人が多くいらっしゃいました

スポットワークについて理解したら、ワークショップがスタート。4つのテーマに沿って意見や感想を出し合います。

  • あなたの「スキマ」はいつ?
  • 実は持っている「隠れ資産」は?
  • 佐伯で「こんなバイト」があったら最高!
  • 「働く」を通じて得たいものは?

議論は白熱!1

議論は白熱!2

各チームの発表では、単なる労働力提供にとどまらず、「地域のお手伝い」や「生きがい」に繋がるアイデアが多く出されたことが印象的でした。

アイデアはたくさん

盛り上がる発表!

今回のしゃべり場に参加していた、地域振興課の戸髙さんからは、「今回、タイミーとの連携協定では、単なる労働力不足の解消だけでなく、市外から『地方で働きたい』という意欲あるワーカーさんを呼び込むことで関係人口が増加することにも主眼を置いています。1月に予定しているセミナーなどを通じて企業の求人も増やしていくので、ぜひスキマ時間を活用して、佐伯市の活性化に一緒に取り組んでいただければ」 と、今後の広がりへの期待を語りました。

行政と市民がタッグを組んで挑む、新しい関係人口の創出のあり方

人口減少と労働力不足という地方共通の課題に対し、佐伯市は行政と市民コミュニティが手を取り合うことで解決の糸口を探っています。なぜ今「スポットワーク」なのか。そして、そこから生まれる地域の未来とは。立場の異なる3名に、それぞれの視点から語っていただきました。

・佐伯市 地域振興部 地域振興課 ふるさと振興係 課長補佐兼総括主幹 戸髙 博彦さん
・佐伯市 地域振興部 地域振興課 ふるさと振興係 副主幹 山本 哲司さん
・しゃべり場運営代表 福井 大輔さん

——まずは、佐伯市が抱えている課題と、今回の包括連携協定に至った背景を教えてください。なぜ「タイミー」だったのでしょうか?

戸髙 博彦さん(以下、戸髙さん):やはり一番の根底にある課題は「人口減少」です。人が減れば産業も衰退してしまう。事業者の方々からは「求人を出してもなかなか人が集まらない」「雇用がままならない」という切実な声をよく耳にします。それが最初のきっかけでした。

佐伯市 地域振興部 地域振興課 ふるさと振興係 戸髙 博彦さん

佐伯市 地域振興部 地域振興課 ふるさと振興係 戸髙 博彦さん

さらに今回の協定の話は、単なる労働力不足の穴埋めだけではなく、「関係人口作りを強化したい」という目的もありました。もちろん、いきなり正規雇用で人が来てくれればベストですが、現状はそう簡単ではありません。そこで、まずは短期でもいいから佐伯市に来て働いてもらう。そこから佐伯市と関わりを持つ人を増やし、ゆくゆくは定住や観光振興にもつなげていきたい。「働く」ことを入り口にして関係人口を創出する手段として、タイミーと連携するのが最適だと考えたのです。

——次に「しゃべり場」について教えてください。どのような背景で開催に至ったのでしょう?

福井 大輔さん(以下、福井さん):きっかけは、私が佐伯市の「市民大学(地元学の会)」に参加したことでした。そこで出会ったメンバーとのプロジェクトの一つとして生まれたのが、この「しゃべり場」です。

しゃべり場運営代表 福井 大輔さん

しゃべり場運営代表 福井 大輔さん

私自身、進学で一度佐伯市を離れ、2017年に家業を継ぐためにUターンしたのですが、戻ってきた当初は知り合いがおらず孤独を感じてしまって。佐伯市には既存のコミュニティはあるのですが、どうしても高齢者中心だったり、性別で分かれていたりして、多世代がフラットに話せる場がなかなかないと感じていました。そこで、世代を超えて誰もが参加できる場を作りたいと考えたのです。

——佐伯市において、福井さんのようなUターンや、Iターンの方は多いんでしょうか?

福井さん: 非常に増えてきていますね。実は今、佐伯を盛り上げているのは、私のようなUターン組や外から入ってきたIターンの方々なんです。建築やまちづくりの専門家など、外の視点を持った「外部人材」が活躍しています 。中の人間が当たり前だと思っていることでも、外から来た人は「これすごいね!」と価値を見出してくれる。だからこそ、UターンやIターンの受け入れは地域にとって非常に重要だと感じています。

学生など若い方が参加することも増えてきた

学生など若い方が参加することも増えてきた

——このような市民活動に対して、行政との連携はどうなっているのでしょうか?

福井さん: 佐伯市は「しゃべり場」に対して非常に協力的です。会場の備品を用意してくれたり、実際に市の職員さんが参加して意見を聞いてくれたりと、まさに二人三脚で進めています 。 行政と市民、どちらか一方ではなく、お互いが手を取り合っているのが佐伯市ならではの良いところですね。

戸髙さん:その市民大学の発表会で「しゃべり場」の構想を聞いた時に、市のコミュニティ創生課が手を挙げました。行政としても、普段なかなか声を聞くことができない市民の方々の意見を吸い上げ、それを施策に活かしていきたいという強い想いがありました。

山本 哲司さん(以下、山本さん):実際、「しゃべり場」で上がった意見を共有いただいており、非常に参考になっています。今回のテーマもそうですし、「空き家活用」「コミュニティ」といったテーマなど、我々が施策を考える上でのアイデアになると思います。

佐伯市 地域振興部 地域振興課 ふるさと振興係 山本 哲司さん

佐伯市 地域振興部 地域振興課 ふるさと振興係 山本 哲司さん

——今回のテーマは「スポットワーク」でした。なぜスポットワークをテーマに開催されたのですか?

福井さん:きっかけはタイミーとの連携協定でしたが、「働く」ということは、多様な課題解決の切り口になると考えたからです。単に旅行に来るだけではなく、そこで「働く」という体験が入ることで、地域との関わり方がより深くなります。例えばリゾートバイトのように、楽しみながら地域に関わることもできますし、そうやって交流人口を増やしていく上で、スポットワークは非常に良いテーマだと思いました。

——実際に「しゃべり場」を開催してみて、どのような手応えや期待を感じましたか?

福井さん:想像以上でしたね。特に参加者の皆さんが関心を持たれたのは、「スポットワークにはさまざまな時間帯や働き方がある」という点です。「フルタイムは無理だけど、この時間なら働ける」「年齢を重ねても、こういう働き方ならできるかもしれない」と、自分自身の生活に合わせて働けることに気づき、目が輝いていたのが印象的でした。また、今回のテーマを通じて、参加した市民の方々が「自分たちの地域にどういう仕事があったら人が来てくれるだろうか」と、自分事として考えてくださっていたのが印象的でした。

さいき城山桜ホール

山本さん:今回私は初めて参加したのですが、想像以上にみなさん意見が活発だったことに驚きました。「スポットワークという働き方がある」ことを知ってもらうきっかけになったのが大きいと思いました。

戸髙さん:行政が一方的にやるのではなく、市民の皆さんが主体的に「環境をどう変えていこうか」と考えてくれる場になったのは大きな成果です。また、外から来た若い人たちが、私たちが当たり前だと思っている佐伯の魅力を「発見」してくれることも大きな気づきでした。海がきれい、魚が美味しいといった当たり前のことが、外の視点では「すごい!」となる。そういった外部の視点が入ることで、地域全体が盛り上がっていく手応えを感じました。

もちろん、しゃべって楽しかったで終わりではなく、みなさんから発信された意見やアイデアを役所内でも共有しあい、実現につなげていきたいと思います。

——タイミーにおいて、現場の課題解決という点では、今後どのような展開を期待されていますか?

楽しいしゃべり場

福井さん:タイミーさんのお力を借りて、やはり「若い人」を呼び込みたいですね。普段のコミュニティはどうしても年齢層が高くなりがちですが、今回は大学生などの若い世代も参加してくれて、多世代での話し合いができました。

戸髙さん:そうですね。特に子育て世代の方々に佐伯に来てほしいと願っています。働きに来て、佐伯の魅力を肌で感じてもらう。それがきっかけで「佐伯いいところだな、住んでみたいな」と定住につながっていくような流れを、住民の皆さんと一緒に作っていきたいです。

山本さん:特に一次産業の現場での活用ですね。私は個人的に近所のミカン狩りの手伝いをすることがあるのですが、収穫時期など「このタイミングでどうしても手が欲しい」という時があるんです。でも、農家さんも高齢化が進み、なかなか人が集まらない。そういった「短期間の仕事」というのは、スポットワークと非常に相性が良いと感じています。

戸髙さん:さらに言えば、単なる労働力確保だけでなく「事業承継」のきっかけにもなればと期待しています。後継ぎがいない農家さんや事業者さんのところに、短期バイトで若い人が来て、もし気に入ってもらえたら「この仕事、引き継いでくれないか」というような未来も描いています。

福井さん:それ、すごくいいと思います。いきなり「就農してくれ」「正社員になってくれ」と言われてもハードルが高い。しかし、スポットワークでまずは数時間体験してみて、「あ、この仕事いいな」「この事業者さん面白いな」と分かれば、その先に進みやすいです。受け入れる側も、働きぶりを見てから判断できるので安心ですよね。

——行政には行政の、企業には企業のそれぞれの役割があります。お互いの強みを活かしながらスキルをシェアし合い、佐伯市内から人材が流動する流れを作っていきたいですね。

佐伯市内から人材が流動する流れを作る

おすすめ記事