スポットワーカーの適正納税に向けた啓発活動の取り組み

スポットワーカーの適正納税に向けた啓発活動の取り組み

適正納税に向けた啓発活動の実施にあたって

近年、スポットワークという働き方は市場の急拡大とともに社会に浸透しつつあります。一方で、副業や兼業として利用する働き手が増加する中、確定申告の必要性や具体的な手続きについて、必ずしも十分な理解が得られていないという課題も浮き彫りとなっています。

こうした状況を踏まえ、スポットワークのプラットフォーマーとして、スポットワークという働き方に関わる納税に関する知識の普及を図り適正納付に繋げるため、啓発活動を行うこととしました。本報告では、一連の取り組みの内容とともに、1,600名を超える受講者アンケートの結果から得られた確定申告における意識変容の実態について報告します。

取り組みの概要

タイミーでは、2025年度の確定申告に向け、2025年11月より、タイミーアプリに登録しているワーカー(以下、単に「ワーカー」といいます。)の納税行動を「気づき→理解→実行」の3段階で促進する取り組みを実施しました。

取り組みの概要

第一段階:気づき(アプリ内通知)

確定申告の義務の有無や申告が必要となる所得基準(給与所得者における年間20万円超の副業所得等)について、タイミーのアプリ内通知にて周知しました。具体的には、ワーカーの理解度に応じて以下内容の異なる2パターンのバナーを掲出し、それぞれの状況にあった導線を提供しました。

  • パターンA:セミナー告知バナー(確定申告の基礎知識を知りたいワーカー向け):確定申告に馴染みの薄いワーカーに対して、まずは「制度を知る」ための入り口として掲出しました。申告の要否判断や基本ルールの解説を行うオンラインセミナーへ誘導し、制度の概要を理解できるよう設計しました。

セミナー告知バナー

  • パターンB:確定申告アプリ誘導バナー(申告手続きを進めたいワーカー向け):すでに確定申告について一定の理解があるワーカーに対して、確定申告アプリ「FinFin」(※1)を紹介するバナーを掲出し、速やかに申告手続きに着手できるよう支援しました。

確定申告アプリ誘導バナー

第二段階:理解(オンラインセミナーによる実務知識の習得)

確定申告に関する実務知識をワーカーに提供するため、税理士監修のもと、オンラインセミナーを開催しました。セミナーでは、受講者が「自分ごと」として申告手続きを理解できるよう、スポットワークの就労実態に即した具体的な事例を交えながら、以下の内容について解説しました。

  • 申告の要否判定:所得の種類(給与所得、雑所得等)に応じた申告義務の有無
  • 必要書類の準備手順:源泉徴収票の取得方法や収入・経費の整理方法
  • 各種控除の活用方法:基礎控除、社会保険料控除等、ワーカーが活用できる主な控除制度の紹介
  • 複数の給与支払者からの所得合算:複数の異なる事業所から得た給与の合算方法や申告書への記載方法

詳細は こちらの記事を参照ください。

第三段階:実行(申告への橋渡し)

具体的には、セミナー終了後に確定申告アプリ「FinFin」へシームレスに遷移できる導線を設計しました。ツールという「具体的な手段」を提示することで、知識を即座に活用し、申告を完遂できる環境を整えました。

(※1)タイミー社は、2024年11月に会計バンクと業務提携し、実態調査や確定申告セミナーの開催等、共同で適正納税に向けた啓発活動に取り組んでいる。また同時期に会計バンクによるスポットワーカー向け確定申告アプリ「確定申告 for スキマバイト」の提供も開始。

取り組みの結果

1.情報の到達と関心度

アプリ内通知によるセミナー告知バナー及び確定申告アプリの紹介バナー(以下、「税務関連バナー」といいます。)から閲覧できる税務関連コンテンツは、配信期間中に延べ約407万回閲覧されました。

とりわけ、一般的なバナー広告のCTRが0.5%前後とされる中(※2)、確定申告アプリへの誘導バナーのクリック率(CTR)は8.2%に達しました。また、配信期間中の税務関連コンテンツの表示回数に占める確定申告アプリの紹介バナーの割合は21.8%でしたが、クリック数では全体の約63.9%を占めました。就労者が確定申告の実務支援ツールに対して高い関心を有していることがわかります(※3)。

(※2)一般的なディスプレイ広告(バナー広告)の平均CTRは0.3〜0.6%程度とされている(WordStream社調査等)。モバイルアプリ関連のSNS・ディスプレイ広告でも0.5〜1.0%程度が一般的な水準であり、8.2%はこれらを大きく上回る水準である。
(※3)本データはタイミーアプリ内での行動データに基づくものであり、実際の確定申告の実施状況を直接測定したものではない点に留意ください。

2.属性の分析

税務関連バナーをクリックしたワーカー(n=61,254)の属性を分析した結果、約3分の2を女性が占めました(図1)。タイミーアプリの登録ワーカー全体の性別構成比(女性55.0%、男性42.0%)(※4)と比較してもやや女性の割合が高い傾向です。

性別構成比

また、年齢を見ると、50代がもっとも多く25.9%、次いで40代が24.2%、20代が19.1%、30代が18.1%と続きました(図2)。幅広い年代で確定申告への関心があることがわかります。

年代別分布

次に、職業を見ると、パート・アルバイトが43.2%ともっとも多く、次いで会社員(正社員)が20.3%、専業主婦(夫)が15.3%と続きました(図3)。それぞれの立場から確定申告や扶養控除などの税務への関心がうかがえます。

職業別クリック比率

(※4)当社HPの 登録ワーカーの属性より(2024年12月時点)

3. タイミーを利用した就労経験の有無による行動傾向の違い

タイミーを通じてスポットワークをした就労経験の有無別に行動傾向を見ると、セミナー告知バナーでは就労経験あり52.4%、なし47.6%とほぼ均等であったのに対し、確定申告アプリバナーでは就労経験あり96.2%、なし3.8%と顕著な差が見られました(図4・図5)。

この結果から、就労経験のないワーカーは、実務ツール(アプリ)よりも、まず基礎知識(セミナー)の方に反応しやすいことがうかがえます。

こうしたクリック傾向の違いは、ワーカーの就労段階に応じて求められる情報の種類が異なる可能性を示しており、プラットフォームとしてワーカーの状況に合わせた段階的な情報提供を設計する上での参考になり得ると考えられます。

セミナー告知バナー クリック者の就労経験別構成比

確定申告アプリバナー クリック者の就労経験別構成比

4. 確定申告セミナー受講者の意識変容

セミナー後に受講者の意識にどのような変化があるかを把握するため、アンケート調査を実施しました(n=1,620)。

まず、受講者がセミナーに参加した目的について見ると、「タイミー利用時の税金について知りたい」が最も多く、次いで「確定申告の基本的な仕組みを学びたい」が挙げられました(図6)。多くの受講者が、自身の働き方に直結する税務上のルールや申告の必要性について、高い関心を持って参加していたことがうかがえます。

今回のセミナーに参加した目的

次に、確定申告の経験の有無別にセミナー受講前後の理解度を聞いてみたところ、確定申告の未経験者の多くは、受講前は「言葉を聞いたことがある」「全く知らない」と回答していましたが(図7)、受講後には大半の方が「理解できた」と回答しました(図8)。確定申告の経験がある受講者についても、セミナー受講後には大半の方が「内容を理解できた」と回答しており(図8)、確定申告の経験の有無を問わず理解が深まったことが確認されました。

セミナー受講前の理解度(確定申告経験別)

セミナー受講後の理解度(確定申告経験)

さらに、セミナー受講後の確定申告への意欲の変化を見てみると、確定申告の未経験者のうち「ぜひ自分でやってみたい」「必要であれば自分でやってみたい」と回答した受講者は95.0%にのぼりました。

自由回答においても、受講前には「複数の勤務先からの所得の合算方法がわからない」「自分が確定申告の対象かどうか不明」といった不安が多く見られましたが、受講後には「手順が明確になった」「自分にもできそうだ」といった声に変わったことが見てとれました。

申告意欲の変化(確定申告経験別)

こうしたアンケート調査の結果から、受講者の意識は以下の3段階を経ていることが示唆されます。

第1に、「漠然とした不安」から「具体的な手順の理解」への転換です。受講前は確定申告は難解だと感じていた層が多かったものの、セミナーにおいてスポットワーク特有の事例(複数の給与支払者からの所得合算、源泉徴収票の収集方法)を用いて解説したことで、「自分の場合はこうすればよい」という具体的な理解につながりました。

実際のセミナー投影資料1

実際のセミナー投影資料

第2に、「自分ごと化」の効果です。セミナーにおいてスポットワーカーの就労実態に即した事例を提示したことで、受講者が「これは自分のケースだ」と認識することにつながりました。

実際のセミナー投影資料2

実際のセミナー投影資料

第3に、「自分でもできそうだ」という自己効力感の醸成です。セミナーにおいてタイミーアプリ機能の活用方法や確定申告アプリとの連携が紹介されたことで、「やり方はわかったが実行は難しそうだ」という懸念が払拭され、「ツールがあるから自分でもできる」という意欲につながりました。

また、セミナーを通じてタイミーへの信頼度が高まったと回答したワーカーは88.0%に達しました。副次的な効果として、確定申告の正しい知識を伝えることがスポットワークのマッチングプラットフォームへの信頼度の向上にもつながり得ることが示唆されます。

セミナー受講後のプラットフォームへの信頼度の変化

おわりに

本報告が示す通り、適切な情報と手段を提供することで、納税に対する自発的な行動を促し得ることが示唆されました。一方で、今回の分析はアプリ内の行動データおよびセミナー受講者へのアンケートに基づくものであり、実際の申告完了までを追跡できていない点や、啓発が届きにくい層へのアプローチなど、今後検討すべき課題も残されています。

これらの課題を踏まえつつも、ワーカーの属性や状況に応じて、「気づき→理解→実行」の各フェーズに最適化された情報提供を行い、申告実務の支援までをシームレスにつなげ、ワーカーの自発的な納税行動を後押しすることで、スポットワークのマッチングプラットフォームが適正納税を支援する一つの仕組みとして寄与し得るものと考えています。

また、今回の取り組みでは確定申告アプリ「FinFin」を選択肢の一つとして紹介しましたが、今後はe-taxをはじめとする多様な申告手段についても具体的な利用方法を案内し、ワーカーがより幅広い選択肢の中から自身に最適な申告方法を選べるよう、情報提供の充実を図っていく必要があると考えています。

スポットワークという新しい働き方が社会に浸透する中で、就労者の適正納税を支援する仕組みは、税制度の信頼性の維持という公共的な意義を持つものです。こうした考え方に基づき、これからも納税環境の整備に向けた取り組みを継続していきます。

株式会社タイミー スポットワーク研究所
公共政策部 政策渉外グループ 山本大樹

大学卒業後、法人営業を経て、税理士・行政書士等の専門家と協働し、相続手続きのコンサルティング業務に従事。法令・制度に関わる実務経験を重ね、2025年7月より株式会社タイミーへ参画。現在は、労働法・税制に関する政策課題の調査・論点整理を担い、スポットワークの健全な発展に向けて、行政や業界団体等、多様なステークホルダーとの対話に注力している。

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