【東大UTMD×タイミー共同研究レポート】スポットワーク市場のマッチング効率と弾力性を分析―求人が増えると市場はどう動くのか?

東大UTMD×タイミー共同研究レポート】スポットワーク市場のマッチング効率と弾力性を分析―求人が増えると市場はどう動くのか?

株式会社タイミーでは、国立大学法人東京大学大学院経済学研究科 東京大学マーケットデザインセンター(以下「UTMD」)と、スポットワーク市場におけるより良いマッチング体験の実現に向け、働き手と事業者のマッチングに関する共同研究プロジェクトを推進しています。

今回は、本プロジェクト内で実施された、スポットワーク市場における「マッチング効率(スムーズにマッチングする度合い)と弾力性(求人数やユーザー数の増加に対してマッチング数が増える度合い)」に関する研究成果についてご紹介します。

本研究により、スポットワーク市場では、働き手と求人がよりスムーズにマッチングするようになってきた(マッチング効率が高まってきた)ことが、データから明らかになりました。この背景には、サービス改善による「マッチングの精度」の向上や、アプリ上で迅速に、繰り返しマッチングできるという、スポットワークならではの特徴があると考えられます。

※研究結果の発表論文「Nonparametric Estimation of Matching Efficiency and Elasticity in a Spot Gig Work Platform: 2019–2023」の詳細は、以下、UTMDの発表をご参照ください。

研究概要

スポットワークとは、短時間・単発の雇用契約を結ぶ働き方です。働き手はアプリから履歴書・面接なしですぐに就労でき、求人事業者は必要な時間・人数、求めるスキルを設定し、柔軟に募集できるのが特徴です。

本研究では、スポットワークサービス「タイミー」の事業データを用いて、スポットワーク市場において、働き手と求人がどのようにマッチングしているのかを分析しました。

特に着目したのは、マッチングの成立しやすさを示す「マッチング効率」と、ユーザー数や求人数の増減に市場がどう連動するかを示す「弾力性」の2指標です。分析対象としたのは、2019年12月から2023年12月にかけての以下の月次データです。

  • アクティブユーザー数:各月にタイミーアプリを起動した登録ワーカー数
  • 求人数:タイミーアプリ上に掲載されたスポットワークの求人件数
  • マッチング数:スポットワークの求人についてマッチングが成立した数

※本研究のデータ分析では、タイミーの登録者(ワーカー)のうち、各月にアプリを起動して実際に活動していた人を「アクティブユーザー数」として定義・区別しています。

これらデータを使って以下の指標を推計しました。

  • マッチング効率:アクティブユーザー数・求人数が同じでも、どれだけスムーズにマッチングが成立するかを表す指標。アプリの利便性やマッチングの精度向上などが反映され得ます。
  • ユーザー弾力性・求人弾力性:アクティブユーザー数または求人数が1%増えたときに、マッチング数がどの程度増えるかを示す指標

結果概要

分析の結果、以下の点が確認されました。

2019年12月比で「マッチングのしやすさ」が約8倍に上昇

  • スポットワーク市場のマッチング効率は、分析対象期間中に大きく上昇し、2023年5月時点で2019年12月の8倍に達していたことがわかりました。
  • 推計されたマッチング効率には、市場規模の拡大などの相乗効果もあるものの、スポットワークのプラットフォーム上で、働き手と求人がマッチングしやすい環境が形成されてきたことを示しています。

マッチング数は求人数の変化により反応しやすい傾向

  • 弾力性をみると、分析対象期間において、ユーザーが1%増えると、マッチング数は0.2〜0.3%、求人(仕事)が1%増えると、マッチング数は0.7〜1.1%増加する関係が確認されました。
  • これは分析対象期間において、マッチング数が、アクティブユーザー数よりも求人数の変化に対してより強く反応していた可能性を示しています。
  • ただし、この結果の解釈には留意が必要です。スポットワークでは、同じワーカーが月に複数の求人とマッチングすることがあります。一方で、アクティブユーザー数は月毎に1人1回としてカウントされているため、同じワーカーが複数回働いた場合でも、ユーザー数は増えず、マッチング数だけが増えることになります。そのため、データ上は、ユーザー数の増加がマッチング数の増加につながる度合い(弾力性)が、実際よりも低めに出る可能性があります。
  • もっとも、このような測定上の留意点を踏まえても、ユーザー数の増加よりも、求人数の増加のほうがマッチング数の増加につながりやすい傾向が見られました。このことは、スポットワーク市場においては、ワーカーを増やすだけでなく、「豊富で魅力的な仕事」を確保することが、マッチングの成立に重要である可能性を示しています。

主要都市圏では、求人・ユーザー増加への反応はおおむね共通

  • 主要都市圏(東京、大阪、愛知)ごとのマッチング効率及び弾力性も分析したところ、「マッチングのしやすさ」の推移には一定の地域差が見られましたが、求人やユーザーの増加がマッチング数の増加につながる度合いは、地域間で近い数値を示しました。
  • この結果は、主要都市圏においては、地域に関わらずスポットワークの仕組みが安定して機能していることを示唆しています。

ハローワークとの比較から見えるスポットワーク市場の特徴

  • 本研究では、スポットワーク市場の特徴をより明確に捉えるため、ハローワーク(公共職業安定所)のパートタイム求人のマッチングに関する推計値との比較も行っています。
  • ハローワークについては、分析期間中、マッチング効率が一定の水準で推移していたのに対し、スポットワーク市場では、マッチング効率が大きく上昇しました。また、スポットワーク市場では、求人数の増加がマッチング数の増加につながりやすいという特徴も確認されました。
  • これらの結果からは、スポットワーク市場が、短時間・単発の求人と働き手を反復的かつ迅速に結びつける、従来型の職業紹介とは異なるマッチング構造を持っていることが示唆されます。
  • なお、これらの結果の解釈に当たっては、ハローワークとスポットワーク市場では、対象となる求人・求職者の属性や、マッチング後の求職者の利用継続の仕組み等が異なることに留意が必要です。

共同研究プロジェクトについて

当社では、働き手、事業者双方にとってより良いマッチング体験を提供することを目的として、UTMDとの共同研究プロジェクトを複数進行しています。今後も、スポットワーク市場に関するデータ分析を通じて、働き方の実態や市場メカニズムの解明に取り組み、スポットワークのより良い活用可能性について発信していきます。

おすすめ記事