
株式会社タイミーでは、国立大学法人東京大学大学院経済学研究科東京大学マーケットデザインセンター(以下「UTMD」)と、スポットワーク市場におけるより良いマッチング体験の実現に向け、働き手と事業者のマッチングに関する共同研究プロジェクトを推進しています。
今回は、本プロジェクト内で実施した「最低賃金の引上げに対するスポットワーク市場の反応に関する研究」の成果についてご紹介します。
※研究結果の発表論文「Who Bears the Cost? High-Frequency Evidence on Minimum Wage Effects and Amenity Pass-Through in Spot Labor Markets」の詳細は、以下、UTMDの発表を参照ください。
研究概要
最低賃金の引上げが、雇用や賃金以外の報酬である福利厚生に与える影響は、これまで労働経済学の分野において重要なテーマとして研究されてきました。今回の研究は、タイミーに掲載された募集データを用い、スポットワーク市場における最低賃金改定に対する反応を実証する初めての研究であり、賃金区分別の雇用者数の分布や、交通費支給に与える影響を分析するものです。
分析のために用いられたタイミーに掲載された募集データでは、求人情報に紐づく、賃金、労働時間、交通費の支給額などの情報が日次で追跡可能であり、市場の短期的な反応について、高解像度での分析が可能となりました。
研究成果
分析の結果、2023年10月の最低賃金引上げ後、
- 改定前の最低賃金区分における雇用者数の減少と、新しい最低賃金区分における雇用者数の増加により、全体として最低賃金改定前の雇用者総数から2%減少したこと
- 交通費の有無やその支給額に対する影響はいずれもごくわずかであったこと
が確認され、事業者は最低賃金引上げに対して、交通費を大きく削減することなく対応したことが明らかとなりました。つまり、スポットワーク市場においては、最低賃金引上げに伴うコスト増は、福利厚生の削減によって相殺(調整)するのではなく、主に事業者によって吸収(負担)していると考えられます。
また、本研究では、職種別の雇用者数の分布への最低賃金改定の影響も分析しており、(専門職やエンタメ職を除き)多くの職種においては雇用者数の減少がみられる中で、特に、飲食、小売、イベントスタッフで雇用者数の減少が大きく、一方、物流や軽作業などの職種では雇用者数の増加も一定程度観察されました。
中でも興味深い結果が見られたのは、オフィスワーク分野です。同分野では、より高い賃金区分の雇用の増加が確認されました。この結果からは、企業が最低賃金の引上げに対し、単にコストを抑えるのではなく、よりスキルの高い人材を雇用し仕事の質を高めようとする調整が行われている可能性がうかがえます。
最後に、プラットフォームを介して働いたワーカーの報酬総額(時給に労働時間を乗じたもの)は、最低賃金改定後も増加傾向にあることが確認され、最低賃金の改定がプラットフォームの収益に与えるネガティブな影響は限定的であったことが分かりました。
共同研究プロジェクトについて
当社では、働き手、事業者双方にとってより良いマッチング体験を提供することを目的として、UTMDとの共同研究プロジェクトを複数進行しています。
今回ご紹介した研究成果のほか、スポットワーク市場のマッチング効率についての共同研究の成果として「Nonparametric Estimation of Matching Efficiency and Elasticity in a Spot Gig Work Platform: 2019–2023」が発表されています。本研究の詳細は、以下、UTMDの発表を参照ください。