
株式会社タイミーでは、国立大学法人東京大学大学院経済学研究科東京大学マーケットデザインセンター(以下「UTMD」)と、スポットワーク市場におけるより良いマッチング体験の実現に向け、働き手と事業者のマッチングに関する共同研究プロジェクトを推進しています。
この度、タイミーの募集データを活用した「最低賃金の引上げに対するスポットワーク市場の反応に関する研究」において、追加分析を実施いたしました。本分析により、最低賃金改定が雇用者数に与える影響のみならず、求人構成のダイナミックな変化や市場の調整スピードなど、より解像度の高い結果が得られました。今回は、これら新たに得られた知見の概要をご紹介します。
※アップデートされた研究成果の発表論文「Just After Minimum Wage Hikes: Short-Run Labor-Demand Response and Reallocation」の詳細は、以下、UTMDの発表を参照ください。
追加分析による新たな発見
1)雇用減少の主な要因はワーカーの「働き控え」ではなく、事業者側の調整
本研究では、最低賃金の引上げ後、スポットワークにおける雇用者数が2%減少したことが確認されました。追加分析の結果、その背景にあるメカニズムとして、以下の点が明らかになりました。
①求人事業者(需要側)による募集の抑制
雇用減少の要因が、ワーカー(供給側)の応募控えではなく、主として事業者による募集抑制であったことが確認されました。
②1求人あたりの労働時間の微増
求人件数が減少する一方で、1求人あたりの労働時間はわずかに長くなる傾向が見られました。この結果、総労働時間の減少幅は求人数の減少幅に比べて限定的でした。
③年収の壁による就業調整の影響を否定
ワーカー側については、性別や就業属性を問わず、最低賃金変更時点や年末にかけて労働供給が縮小する動き(働き控え)は確認されませんでした。むしろ年末にかけて労働者数は全体として増加しており、スポットワークが年末期における所得獲得機会の拡大に寄与している可能性が示唆されました。
2)求人内容の構成変化(再配分)の可能性
求人の交通費支給の有無や、募集要件のテキスト情報を分析したところ、最低賃金引上げが求人内容の構成にも変化をもたらしたことがわかりました。
①条件が相対的に低い求人の減少と求人構成の変化
交通費支給無しの求人が減少する一方、支給のある求人は安定的に推移し、わずかに増加する傾向もみられました。これは、賃金の上昇局面において、相対的に付加価値の低い求人が市場から姿を消しやすくなった可能性を示唆しています。
②求める人材要件のシフト
最低賃金引上げ後、求人の人材要件に変化がみられました。
- 「女性活躍中」等と求人に表記している求人が減少し、「男性活躍中」等と求人に表記している求人の比率が上昇する動きが観察されました。これは、最低賃金引上げ後、プラットフォーム上で特に需要が大きい職種・業務(物流等)において求人が維持され、結果としてそれらの職種・業務特性に合う人材を求める求人の比率が相対的に高まったものと考えられます。
- 経験者を対象とする求人の比率が上昇する傾向がみられました。この結果は、最低賃金引上げに伴い、即戦力となる経験者を求める求人が相対的に増え、市場の求人構成が変化しつつある可能性を示唆しています。
3)極めて迅速な市場調整の実態
以上のような最低賃金改定後のスポットワーク市場の反応は、最低賃金改定直後から概ね1週間以内という極めて短期間に発生し、その後安定することが確認されました。これは、スポットワーク市場が制度変更に対して極めて即時に、柔軟に対応していることを示す結果といえます。
共同研究プロジェクトについて
当社では、働き手、事業者双方にとってより良いマッチング体験を提供することを目的として、UTMDとの共同研究プロジェクトを複数進行しています。今後もデータ分析に基づいた市場実態の解明に努め、スポットワーク市場の新しい可能性を追求していきます。