役場と事業者と働き手の架け橋に。都農町の労働力確保に邁進する「ツノスポーツコミッション」の事例

役場と事業者と働き手の架け橋に。都農町の労働力確保に邁進する「ツノスポーツコミッション」の事例

2024年11月22日、タイミーは、都農町(宮崎県児湯郡)および一般社団法人ツノスポーツコミッションと連携協定を締結しました。スポーツコミッションとの連携協定は全国で初となった本連携協定。連携以前から当社と関係人口創出を目指し歩んできたツノスポーツコミッションは、人口減少や少子高齢化による労働力不足の問題に対して、事業者および働き手がタイミーを利用しやすい環境づくりに邁進されています。

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そこで今回は、一般社団法人ツノスポーツコミッション 事業統括責任者 小松原さんに「中間支援組織」としての活動について、インタビューを実施。そして、都農町内でも特にタイミーを活用している、有限会社慶助、株式会社都農ワインの皆さまにもコメントをいただきました。

一般社団法人ツノスポーツコミッション 事業統括責任者 小松原 駿さん

1988年東京都生まれ。同志社大学経済学部卒業後、映像制作や清酒醸造などの経験を経て2020年宮崎県都農町へ移住。現在は、ツノスポーツコミッションの事業統括責任者として都農町の地域振興に関わる。

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スポーツを通じて「地域に根ざした町づくり」を目指す

——はじめに、ツノスポーツコミッションの設立背景や掲げているミッションについて教えていただけますか。

小松原 駿さん(以下、小松原さん):ツノスポーツコミッションは2019年に設立されました。

私たちの仲間の1人が各地でスポーツ政策やまちづくりの支援を行っている中で都農町とのご縁が生まれ、2018年に商工会や観光協会、体育協会や役場職員等を集めたスポーツ産業検討委員会が発足。1年かけてスポーツが地域にもたらす可能性を模索していきました。その中で、行政の縦割り構造に横ぐしを刺し、観光・商工・健康・教育……といった横断的な連携を促進する団体が必要だという結論に至ったことが設立の背景です。

一般社団法人ツノスポーツコミッション 事業統括責任者 小松原 駿さん

一般社団法人ツノスポーツコミッション 事業統括責任者 小松原 駿さん

私たちのミッションは、「スポーツで人・事業・企業を呼び込み、地域課題の解決を目指す」です。スポーツは娯楽的要素はもちろんですが、人を勇気づけたり、幸せにしたり……地域活性化という点でも大きな力を持っています。そこで私たちは、スポーツを地域経済や社会に貢献する手段として捉えて、持続可能なまちづくりを目指しています。

——「スポーツでまちづくり」に関して、具体的にどのような取り組みを行っているのですか?

小松原さん:最初に実施したのは、サッカークラブ(現:ヴェロスクロノス都農)を丸ごと都農町に誘致したことです。サッカークラブを招くことで、選手やその家族、スタッフなど関係者が町に移住してくれました。つまり、若い世代が一気に町に集まってきたわけですね。私たちは町と連携して、選手たちがサッカーに専念できる環境を整えるのと同時に、選手たちはサッカーだけで生活するというのが現実的に難しかったのでサッカー以外の仕事も用意する必要がありました。選手たちがサッカーをする時間とは別に、地域おこし協力隊として地域の課題解決に向けて活動するというのもその一環でした。若い人たちが移住し町に活力をもたらし、さらには産業の担い手不足にも貢献していく、というような仕組み作りをまず行いました。

選手たちはこれまでサッカーに打ち込んでいたため、その他のお仕事を経験していない人も多いんです。そこで、都農町に来たら様々なお仕事が経験できる、地域の困りごとの支援ができるという形を作りました。そうすることで引退後のキャリア形成や彼らの人生の豊かさにもつながっていくのではないかという期待がありました。

——選手が都農町の仕事をしてくれれば、町民の方たちも助かりますね。

小松原さん:農家の繁忙期支援も行ってきました。都農町の基幹産業は農業ですが、農家の方々の高齢化も進み、特に繁忙期の担い手不足に困っています。ですから、体力がある選手が定期的に来て働いてくれると非常に助かるんですね。農家支援に限らず、こういった地域でのお仕事の提供は選手のキャリア形成だけではなく、地域貢献という側面もあるんです。現在はサッカークラブの運営やサッカー選手兼地域おこし協力隊メンバーの管理などは運営会社(株式会社J.FC 宮崎)にお任せしており、私たちの手からは離れたのですが、引き続き私たちは地域に根差した活動を自治体と連携しながら推進しています。

タイミーきっかけで町の魅力を知ってもらう。連携協定後の効果

——そのような活動をされている中で、なぜタイミーとの連携に至ったのでしょう。

小松原さん:最初にタイミーを知ったのは、とあるサッカー関係者からの紹介でした。以前から担い手不足、特に農業の繁忙期における人手不足が課題で何とかできないかという役場からの相談も受けていたので、タイミーの仕組みが活用できるのではないかと直感的に感じました。都農町は気候が温暖で日照時間が長いため、トマト、スイートコーンかぼちゃなどの野菜、きんかん、ぶどう、梅などの果物、スイートピーなどの花きなど、できない作物はないと言えるほど農業が盛んです。つまり、年間を通して人手があるとありがたい状態です。タイミーのスポットで働くことができるというシステムは担い手不足解消の手段として相性が良さそうだと思いました。

タイミーきっかけで町の魅力を知ってもらう。連携協定後の効果

——タイミーの仕組みは、都農町の地域特性に合致していると考えられたわけですね。

小松原さん:そうです。しかし、いきなり事業者や住民にスポットワークという働き方や仕組みは理解されにくいのではないか、と思ったんです。私たちは関係人口創出や移住・定住促進に注力していたこともあったので、まずは役場とも連携し、タイミートラベル(地方での仕事や生活の体験を通じて、滞在費を賄いながら第二の故郷を見つけることができるサービス)からスタートしました。ありがたいことにサービスを通じて移住者も生まれ、現在は地域おこし協力隊として活躍中です。

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このように、まずはタイミートラベルを活用してみて理解者を増やしていきました。実施してみて初めて「こういう効果があるんだね」と事業者の皆さんに感じてもらうことができ、引き続き一緒に協力していこうという土壌ができてきました。

町に3者連携協定を提案したのは、町としてスポットワークの仕組みを導入する機運が徐々に高まってきたことと、民間のプラットフォームを活用して労働力不足対策に取り組むという意思表示を町としてもきちんとしてほしいと思ったからです。事業者そして働き手がタイミーを安心してて利用してもらうためには「町も支援をしていきます」と表明することが重要です。また、私たちのような地域内で動きながら事業者や働き手をサポートしていくこと、いわゆる「中間支援組織」の存在が必要不可欠ということも今までの経験からわかっていたので、うまく3者の役割分担ができ、3者協定を結ぶ意義がとてもあると感じました。

——まさにツノスポーツコミッションがつなぐ存在となり、取り組み内容を加速していったわけですね。タイミーとの連携後に何か変化を感じられていますか?

小松原さん:事業者のみなさんはこれまで人手を確保するのに様々な苦労をされてきたので、最初は「本当に働きにくるの?」と半信半疑でしたが、タイミーを使うとすぐにマッチングするのでびっくりしていましたね。「登録の仕方や求人記事の作成もサポートしてくれるので助かった」「いろいろな方との出会いがあり楽しい」「さっそく長期で来てもらう方にも出会えた」など、たくさんの嬉しい報告をいただいています。また、導入いただいた事業者から他の事業者に進めてくださるということも増えてきています。今後も地域の事業者のお役に立てるよう、まずはこの取り組みを知ってもらえるようにもっと周知していきたいと思っています。

さらに、働きにきてくださった方からも「また働きにきたい」「素敵な場所で働けました」という声をいただきました。都農町には魅力的な社長や農家さんがたくさんいますので、タイミーをきっかけにどんどん出会って欲しいなと思っています。また都農町外から働きに来てくれる方たちも増えています。これを機に都農町に興味を持っていただけたら嬉しいです。

「都農でやるか」をもっと生み出す

「都農でやるか」をもっと生み出す

——タイミーが普及したのは、まさに小松原さんたちのお力があったからこそですが、中間支援組織として、地元事業者の方たちとどのように関係構築をされていますか。

小松原さん:私たちのこれまでの活動は「労働力不足対策」「移住定住促進」「教育・人材育成」に集約されていて、これからもこの3本柱で活動を進めていく予定です。その中で様々な形で地元事業者さんとの接点が生まれますが、やはりひとつひとつの関係を丁寧に紡いでいくことが大切だと思います。

また、都農町内に唯一あった高校が数年前に閉校してしまったのでその代替として新しい学校を作りました(2025年4月1日に一般社団法人ツノスポーツアカデミーとして独立)。その中で、高校生が地域の事業者の下で働くことを通じ、さまざまな大人と接することで成長していくという取り組み(職育プロジェクト)を行っています。仕事では時に厳しく叱られながらもサッカーの試合時は全力で応援してもらうという経験が高校生にとって励みとなり、彼らの日々の頑張りのおかげで地域の事業者の皆さんとの関係構築が促進されてきた側面もあります。よく、「地方には仕事がない」と言われますが、一方で担い手は確実に不足しており、そこをうまく繋いでいく必要があります。その繋ぐ役割も私たちに求められているのかなと感じています。

一度は都農を出た若者が、帰省時に何気なくタイミーの求人見ていたら地元の事業者を発見し、気軽に応募して働いてみたらとても楽しく、こんな仕事があったのかと驚き、地元に戻ることにした、なんていう方も増えたら嬉しいですね。良い意味で「働くハードル」が低いことが今の時代に合っているのかなと。お互いに「お試し」ができるということが魅力だと思います。ですので、都農町内・近隣地域の求人をもっと出していきたいです。事業者の皆さんよろしくお願いします。

——最後に、タイミーを使って実現したいことなど、今後の展望についてお聞かせください。

小松原さん:タイミーを活用する事業者が増えて地域の担い手不足が緩和していく、タイミーを通じて働く人が増えて人生が豊かになっていく人を増やすのは大前提ではありますが、せっかく協定を結んでいるので都農町ならではの取り組み、実証実験をどんどんやっていきたいです。

まずは「地方にはどんな仕事があるのかわからない」「農業って難しそう」というような方たちに対し、お試しで都農町を体験してもらう機会を増やしたいんです。この町には魅力的な事業者がたくさんいるので、多くの方に知ってもらいたい。体感してもらうことが大事だと思うので、タイミーにさまざまな仕事を掲載したいし、今後はお祭りやイベントを手伝ってくれる人を募集しても面白そうです。

さらにスポーツの観点で言えば、今後は元アスリートのキャリア支援にも力を入れていきたいと考えています。農の都である都農町の農業フィールドを使って、農業の魅力をまず知ってもらう、体験することから始め、既存の就農研修や事業承継、新規就農をするためのスタート地点に立つまでのいわば「担い手予備軍」を元アスリートから生み出していきたいと考えています。アスリートと農業は親和性が高いと感じています。元アスリートが競技活動から離れた世界で活動していくためのサポートをしていきたい。そのためには総務省の地域おこし協力隊制度やタイミー、さらにタイミーキャリアプラスといったサービスも上手く取り入れながらやっていけると良いのかなと考えています。

私たちが地方で精力的に活動をしていくことで、中間支援組織の重要性の理解が広まることを期待しています。その結果、「都農モデル」が確立されていくことで、同じような課題で困っている他の地域でも役に立てるような仕組みが作れるといいなと思っています。

都農町でタイミーを活用する事業者にインタビュー

町のインフラであるスーパー「パントリーけいすけ」〜業務切り出しとリピーター活用で繁忙期に備える〜

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pantryksuke.com

タイミーを利用した理由

働き方改革以降、パートアルバイトの皆さんに残業をお願いすることが難しい状態が続いていました。繁忙期になると、人がいないことに対するストレスも生まれ職場環境にも影響が出ていました。

これまでさまざまな求人媒体を利用していましたが、「どのような人が来るかわからない」という効果が見えない中で投資をし続けることに不満を感じていたんです。しかし、タイミーであれば、人手が足らないときのみに募集ができること、そして稼働したら費用が発生する後課金制であることから、「とりあえずやってみよう」と利用することにしました。

実際に利用してみての感想

マッチングスピードにはびっくりしました。年末に深夜時間帯の募集を行ったが8名あっという間に埋まったんです。手軽に申し込める点が支持されているのかなと思いました。

スーパーはお肉、野菜、ベーカリーなど、場所によって業務内容もスキルもまったく異なります。お客様がいらっしゃる時間は調整できないですし、どの部分でタイミーを利用するか考える必要がありました。現在は既存スタッフが専門的な業務に集中できるように、サポートの仕事を中心に募集をしていたり、クリスマスや節分など忙しくなる繁忙期に合わせてタイミーを利用するようにしています。

タイミーからきてくださる方は町外、県外の方がほとんど。宮崎に旅行中の学生さんだったり、姉妹で一緒にきてくれたり。「夜勤明けに働きにきました!」という方もいましたね。

今後について

リピーターになってくださった方とは、働ける時間を教えてもらってそこの時間に合わせて募集を出す……という活用もしています。今後は子育て中で働きたいけど働けないという主婦・主夫の方が活用できるような仕組みにしていきたいですね。スキルがあるのに働けない状態が続いてしまうのは、当社としても都農町としてももったいないですから。

これからも既存スタッフの負担がかからないよう、バランスを考えながらタイミーを利用していきたいですね。

県外からのファンも多い「都農ワイナリー」〜タイミー経由で契約社員の登用を実現〜

株式会社都農ワイン 代表取締役 赤尾誠二さん

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tsunowine.com

タイミーを利用した理由

ワイナリーではワインの販売、梱包、ベーカリーなどさまざまな仕事がありますが、畑仕事に従事していたスタッフ3名が定年になり退職したことがありました。ブドウの収穫、ワインイベントなどは人手が集まるものの、畑仕事が疎かになると良いワインができません。そこで小松原さんに相談したところ、タイミーを紹介いただきました。

そこで、定植、剪定、芽かき、誘引、収穫などの畑作業を中心に、売り場整理や洗い物、片付けといったベーカリー業務、催事イベントの手伝いで募集を出しました。

実際に利用してみての感想

ありがたいことに多くの方が働きにきてくれています。先日は、サーフィンをしに宮崎に滞在している方もいました。「明日は波が悪いからタイミーで働こう」って、良いスキマ時間活用法ですよね(笑)。転職活動中でいろいろな仕事を体験したいからと申し込んでくれた方もいました。実は、タイミーをきっかけに「畑仕事をもっと極めたいから」と契約社員として就職してくださった方がいるんです。働きっぷりが良いので、そろそろ正社員に昇格させようと思っています。

ワーカーさんの教育指導は現場スタッフに任せているのですが、彼も副業としてタイミーを利用し、さまざまな場所で働いているそうです。スキル習得にもつながりますし、他社で働くことで都農ワインの良さに気づくきっかけになってくれたらいいなと応援しています。

今後について

例えば、「都農ワインの魅力を伝えるコピーを考えてほしい」など、クリエイティブ業務でタイミーを利用するのも面白そうだと考えています。肉体労働はもちろん、さまざまな仕事でタイミーを利用すると、会社の成長にもつながるんじゃないかと思いました。

タイミーとの連携協定によって、商工会をはじめとした事業者たちが都農町について前向きに考えることが増えたと感じています。私も地域の街づくりに貢献していきたい。ワークショップや職業体験など、地方創生の新しいモデルを小松原さんたちと一緒に作っていきたいですね。

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